2026年(令和8年)6月から始まる診療報酬改定。第1回では全体像をお伝えしました。
第2回の今回は、多くの方が気になる「通院(外来)」と「入院」のお会計が、具体的にどう変わるのかを解説します。
「風邪で診療所にかかったら?」「1週間入院したら?」といった疑問に、試算を交えてお答えします。
通院(外来)のお会計、ここが変わります

初診料・再診料とは?窓口負担の基本をおさらい
まず、通院したときのお会計の仕組みをおさらいしましょう。
病院や診療所で診察を受けると、「診察料」がかかります。この診察料には2種類あります。
初診料:初めてその医療機関を受診したとき、または前回の受診から一定期間が空いたときにかかる料金です。
再診料:同じ病気で継続して通院しているときにかかる料金です。初診料より安く設定されています。
2024年(令和6年)6月時点の点数は以下のとおりです。
初診料:288点(2,880円、3割負担で864円)
再診料:75点(750円、3割負担で225円)
これに加えて、検査をすれば検査料、薬が出れば処方箋料、注射をすれば注射料など、受けた医療行為に応じて点数が加算されていきます。
すべての点数を合計し、10円をかけた金額が医療費。その1〜3割を窓口で支払う仕組みです。
2026年6月から、診察料が少し上がります
2026年6月の改定では、初診料と再診料の点数が引き上げられます。
今回の改定では、物価上昇や賃上げへの対応として、診察料に上乗せが行われます。
具体的な点数は最終決定を待つ必要がありますが、改定率(プラス3.09%)をもとに試算すると、およそ以下のような変化が見込まれます。
初診料の場合
現行:288点(3割負担で864円)
改定後:297点前後(3割負担で約890円)
差額:約26円の増加
再診料の場合
現行:75点(3割負担で225円)
改定後:77点前後(3割負担で約231円)
差額:約6円の増加
1回あたりの増加は小さく見えますが、毎月通院している方は、年間で数百円の負担増となります。
「物価対応」の新しい項目が追加されます
今回の改定の特徴として、「物価上昇への対応」を明確にするため、新しい評価項目が設けられます。
これまでの改定では、値上げ分は初診料や再診料に組み込まれていました。しかし今回は、物価上昇分を別の項目として見える形にする方針です。
具体的には、診察料とは別に「物価高騰対応」のような名称の点数が加算される可能性があります。
この方式には理由があります。
今回の改定は2年分(令和8年度・令和9年度)をまとめて決めています。令和8年度と令和9年度で物価上昇の見込みが異なるため、それぞれの年度で調整できるよう、別立ての項目にしているのです。
令和8年度より令和9年度のほうが物価上昇の影響が大きいと見込まれており、令和9年度にはさらに点数が上がる設計になっています。
領収書や明細書の見た目が少し変わるかもしれませんが、計算の仕組みが変わるだけで、特別な手続きは必要ありません。
通院1回あたり、どのくらい増える?試算してみました
実際の通院を想定して、負担増を試算してみましょう。
ケース1:風邪で近所の診療所を受診(初診)
診察を受けて、風邪薬を処方してもらうケースです。
現行の目安:
初診料 288点+処方箋料 68点=合計 356点(3,560円、3割負担で1,068円)
改定後の目安:
初診料 297点前後+処方箋料 70点前後=合計 367点前後(3,670円、3割負担で約1,100円)
差額:約30円の増加
ケース2:高血圧で毎月通院(再診)
持病の管理で毎月通院し、血圧の薬を処方してもらうケースです。
現行の目安:
再診料 75点+特定疾患管理料 225点+処方箋料 68点=合計 368点(3,680円、3割負担で1,104円)
改定後の目安:
再診料 77点前後+特定疾患管理料 232点前後+処方箋料 70点前後=合計 379点前後(3,790円、3割負担で約1,137円)
差額:約33円の増加
年間(12回通院):約400円の増加
ケース3:糖尿病で月2回通院、検査あり(再診)
糖尿病の管理で月2回通院し、定期的に血液検査を受けるケースです。
現行の目安(検査がある月1回分):
再診料 75点+特定疾患管理料 87点+血液検査 約200点+処方箋料 68点=合計 430点(4,300円、3割負担で1,290円)
改定後の目安:
合計 443点前後(4,430円、3割負担で約1,329円)
差額:約40円の増加
月2回・年間24回通院:約960円の増加
通院1回あたりの増加は数十円程度ですが、頻繁に通院される方は年間で1,000円近い負担増になる可能性があります。
入院費のお会計、ここが変わります

入院費の仕組みをおさらい
次に、入院したときのお会計の仕組みを確認しましょう。
入院費は、大きく分けて以下の要素で構成されています。
1. 入院基本料
病室の利用料や、看護師さんのケアなど、入院していること自体にかかる基本的な費用です。病院の種類や看護体制によって点数が異なります。
2. 医療行為の費用
手術、検査、注射、投薬など、治療のために行われた医療行為の費用です。
3. 食事代(入院時食事療養費)
入院中の食事にかかる費用です。1食ごとに定額が決まっています。
4. その他の費用
差額ベッド代(個室料金など)、病衣代、日用品代などは、保険の対象外で全額自己負担となります。
今回の改定では、1の入院基本料と3の食事代が値上げされ、さらに新たに「光熱費」の負担が加わります。
入院基本料が上がります
入院基本料も、外来の診察料と同様に引き上げられます。
入院基本料は、病院の機能や看護体制によって細かく分かれています。たとえば、急性期の大病院と、療養型の病院では点数が異なります。
今回の改定では、すべての入院基本料に対して、物価上昇・賃上げ対応分が上乗せされます。
改定率から試算すると、1日あたり数十円から100円程度の負担増が見込まれます。
1週間の入院なら数百円、1ヶ月の入院なら数千円の増加となります。
食事代、1食あたり40円の値上げ
第1回でもお伝えしましたが、入院中の食事代が値上げされます。
現行の食事代と、改定後の食事代を比較してみましょう。
一般の方の場合
現行(2025年4月〜):1食 510円
改定後(2026年6月〜):1食 550円
差額:40円の増加
1日3食で120円、1週間で840円、1ヶ月で3,600円の負担増となります。
なお、食事代は段階的に引き上げられてきました。2024年6月までは490円でしたが、2025年4月に510円となり、今回さらに550円に引き上げられます。
住民税非課税世帯の方の場合
所得に応じて、もともと食事代が軽減されています。今回の値上げ幅も一般の方より抑えられます。
具体的な金額は所得区分によって異なりますが、1食あたり20〜30円程度の値上げとなる見込みです。
該当する方は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」を提示することで軽減が適用されます。
光熱費、1日60円が新たに加わります
今回の改定で新たに導入されるのが、光熱費の患者負担です。
金額は1日あたり60円。1週間で420円、1ヶ月で1,800円となります。
これまで光熱費は入院基本料に含まれており、患者さんが直接負担することはありませんでした。
しかし、電気代・ガス代の高騰により、病院の経営を圧迫するようになりました。在宅で生活している方も光熱費を負担していることを踏まえ、入院患者さんにも一部負担をお願いする形になりました。
この光熱費負担は、病棟の種類を問わず、ほとんどの入院で発生します。一般病棟、療養病棟、精神科病棟、回復期リハビリテーション病棟など、幅広い病棟が対象です。
1週間の入院で、どのくらい増える?試算してみました
入院した場合の負担増を、具体的に試算してみましょう。
ケース1:一般病棟に1週間(7日間)入院した場合
一般的な急性期病院に、肺炎の治療で1週間入院したケースを想定します。
現行の負担増要因はありませんので、改定後に増える金額を計算します。
入院基本料の値上げ分:1日あたり約30〜50円 × 7日 = 約210〜350円(3割負担の場合)
食事代の値上げ分:40円 × 3食 × 7日 = 840円
光熱費の新規負担:60円 × 7日 = 420円
合計:約1,470〜1,610円の負担増
ケース2:一般病棟に1ヶ月(30日間)入院した場合
骨折の手術とリハビリで、1ヶ月入院したケースを想定します。
入院基本料の値上げ分:1日あたり約30〜50円 × 30日 = 約900〜1,500円(3割負担の場合)
食事代の値上げ分:40円 × 3食 × 30日 = 3,600円
光熱費の新規負担:60円 × 30日 = 1,800円
合計:約6,300〜6,900円の負担増
1週間の入院で約1,500円、1ヶ月の入院で約6,500円の負担増というのが、おおよその目安です。
ただし、高額療養費制度の対象となる方は、実際の負担増はこれより小さくなる可能性があります。
負担が変わらない方・軽減される方

今回の改定では、所得が低い方や難病の方への配慮も設けられています。
住民税非課税世帯の方は、値上げ幅が抑えられます
住民税非課税世帯の方は、食事代の値上げ幅が一般の方より小さく設定されています。
一般の方が1食40円の値上げであるのに対し、非課税世帯の方は1食20〜30円の値上げに抑えられます。
この軽減を受けるには、「限度額適用・標準負担額減額認定証」が必要です。お住まいの市区町村の国民健康保険窓口、または加入している健康保険組合で申請できます。
すでにお持ちの方は、そのまま使えます。まだお持ちでない方は、入院前に申請しておくとよいでしょう。
指定難病の方は、光熱費が免除されます
指定難病の患者さんについては、新たに導入される光熱費負担が免除されます。
指定難病とは、国が定めた難病のうち、医療費助成の対象となっている疾患です。パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデスなど、現在338疾患が指定されています。
難病で長期入院を余儀なくされている方への配慮として、この免除措置が設けられました。
指定難病の医療費助成を受けている方は、特別な手続きなく光熱費が免除されます。
高額療養費制度は引き続き使えます
医療費が高額になった場合に、自己負担を一定額に抑えてくれる「高額療養費制度」は、引き続き利用できます。
この制度では、1ヶ月の医療費の自己負担額に上限が設けられています。上限額は年齢や所得によって異なります。
たとえば、70歳以上で一般的な所得の方の場合、1ヶ月の自己負担上限は約57,600円です。これを超えた分は、あとから払い戻されるか、「限度額適用認定証」を提示すれば最初から上限額までの支払いで済みます。
ただし、注意点があります。
食事代と光熱費は、高額療養費制度の対象外です。これらは上限額とは別に、全額自己負担となります。
今回の改定で食事代・光熱費が増えても、高額療養費の上限額には影響しませんが、総支払額は増えることになります。
入院費が高額になりそうな方は、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくことをおすすめします。
なお、マイナ保険証を利用している方は、限度額適用認定証の申請は原則不要です。オンライン資格確認に対応した医療機関であれば、窓口で「限度額情報の提供に同意」するだけで、自動的に限度額までの支払いで済むようになります。
次回予告とチェックポイント
第3回は「薬代」編
次回は、薬にかかる費用の変更点を詳しく解説します。
「先発薬を希望すると、どのくらい負担が増える?」
「市販薬と同じ成分の薬は、どう変わる?」
ジェネリック医薬品との関係や、負担を抑えるコツもお伝えする予定です。
入院前に確認しておきたい3つのこと
入院の予定がある方は、以下の3点を事前に確認しておきましょう。
1. 限度額適用認定証を取得する(マイナ保険証なら申請不要)
入院前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いを自己負担上限額に抑えられます。
ただし、マイナ保険証を利用している方は、この申請が不要です。オンライン資格確認に対応した医療機関(現在はほとんどの病院が対応しています)であれば、受付時に限度額情報の提供に同意するだけで自動的に適用されます。
マイナ保険証をお持ちでない方や、オンライン資格確認に対応していない医療機関を受診する場合は、加入している健康保険の窓口で事前に申請しておきましょう。
2. 食事代・光熱費の負担区分を確認する
住民税非課税世帯の方は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」を取得しておくと、食事代の負担が軽減されます。
市区町村の窓口で申請できますので、該当する方は入院前に手続きをしておきましょう。
3. 入院予定日を確認する
2026年6月1日より前に入院する場合と、6月1日以降に入院する場合で、適用される料金が異なります。
入院が6月をまたぐ場合は、6月1日以降の分から新しい料金が適用されます。入院期間が長くなりそうな方は、事前に病院の相談窓口で費用の見込みを確認しておくと安心です。
この記事のまとめ
初診料・再診料が引き上げられ、通院1回あたり数十円の負担増となります。入院基本料も引き上げられ、1日あたり数十円〜100円程度の負担増が見込まれます。
食事代は1食40円の値上げで、1週間で840円、1ヶ月で3,600円の負担増。光熱費として1日60円が新たに加わり、1週間で420円、1ヶ月で1,800円となります。
1週間の入院で約1,500円、1ヶ月で約6,500円の負担増が目安です。
住民税非課税世帯は値上げ幅が軽減され、難病の方は光熱費が免除されます。高額療養費制度は引き続き利用可能ですが、食事代・光熱費は対象外となります。
入院前に限度額適用認定証の取得をおすすめします(マイナ保険証を利用している方は申請不要)。
次回【第3回・薬代編】では、先発薬とジェネリック、OTC類似薬の負担変更を詳しく解説します。