まいど、酔いどれです。
前編で「預託金が消えた」「財産を譲れと求められた」といったトラブルをお伝えしました。「やっぱり怖いな、どうすればいいんやろ」と感じた方も多かったと思います。
でも、確認すべきことを知っていれば、悪い事業者を見分けることができます。知っているか知らないかで、結果がまったく変わってくるんです。
後編では、その「知っておくべきこと」を具体的な形でお伝えします。「契約前に確認したい6つのポイント」「身元保証人がいなくても入院できる?」「公的サービスとの使い分け方」「困ったときの相談先」。前編を読んで不安になった方ほど、後編まで読んでほしいんです。
契約前に確認したい重要ポイント

契約書を受け取ったとき、どこを見ればいいかわからなくて、つい「まあ大丈夫やろ」と流してしまいがちです。でも、ここだけは確認してほしい、という6つのポイントがあります。消費者庁のガイドラインをもとに整理しましたので、チェックリストとして使ってみてください。
確認すべき6つのポイントを表で整理する
| # | 確認ポイント | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 1 | 預託金が信託口座で分別管理されているか | 倒産時に預託金を守る唯一の手段 |
| 2 | 解約時の返金ルールが計算式で書面に明示されているか | 「返金ゼロ」「半額没収」条項は法律違反になり得る |
| 3 | 追加費用の発生条件と金額目安が書面に明記されているか | 最多トラブル「想定外請求」の防止策 |
| 4 | 葬儀の形式・納骨の方法など死後事務の内容が契約書に具体的に記載されているか | 希望と違う葬儀・納骨が行われることを防ぐ |
| 5 | 重要事項説明書と契約書が書面で交付されているか | 口頭だけの契約はトラブルの温床になる |
| 6 | 弁護士・司法書士などの第三者が財産管理に関与しているか | 事業者と利用者の二者契約より安全性が高い |
この6つを一つひとつ確認するだけで、「後から後悔した」というリスクをぐっと減らせます。なかでも特に重要な2つについて、詳しく説明します。
最重要:預託金は「信託口座」で分別管理されているか

前編でも少し触れましたが、大切すぎるのでもう一度きっちり話をさせてください。
預託金とは、将来の葬儀費用や死後事務の実費に備えて、あらかじめ事業者に預けるお金のことです。50万〜80万円程度になることが多く、一括で支払います。問題は、この預託金をどのように管理しているかです。
事業者の運転資金と同じ口座に入れて「帳簿上では分けている」というだけでは、万が一事業者が倒産した場合にお金が守られません。一方、信託銀行などの信託口座で管理されているお金は、法律上、事業者の財産と切り離されます。事業者が倒産しても、その口座のお金は返還の対象になるんです。
⛔ 「信託口座で管理しています」だけでは不十分
口頭での説明だけでなく、信託契約書の写しを書面で確認してください。書類を見せることを渋ったり、「信託銀行ではなく自社口座での管理です」という事業者とは、契約しないことをおすすめします。
参考:消費者庁「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」2024年6月
また、預託金残高の明細が定期的に報告される仕組みがあるかどうかも、あわせて確認してほしいんです。年1回以上の報告義務が契約書に明記されているかどうかが目安になります。
解約の返金ルールが「計算式」で明示されているか

もう一つ必ず確認してほしいのが、解約したときの返金ルールです。ここが不明確なままサインしてしまうと、前編でご紹介したような「半額しか戻らなかった」というトラブルに遭いかねません。
確認すべきポイントは2つです。1つ目は、返金の計算式が書面に明示されているかどうかです。「解約の場合は協議のうえ決定します」という書き方では、解約のたびに事業者が有利な条件を提示してくる可能性があります。「契約から1年以内の解約:預託金の全額返還、入会金の○割返還」のように具体的な計算式が示されているかを確認してください。
2つ目は、解約の手順が書面に明記されているかどうかです。電話でいいのか、書面が必要なのか、解約の窓口はどこか。これが契約書に書かれていない場合、いざ解約しようとしたときに「そんな手続きは聞いていない」と言われるリスクがあります。
⚖️ 法律的なポイント
消費者契約法第9条第1項第1号は、ひと言でいうと「サービスをほとんど使っていないのに高額の解約料を取るのはおかしい」という考え方を定めた法律です。「5年後は返金ゼロ」「一律半額没収」という条項は、この法律に違反する可能性があります。
参考:東京都消費者被害救済委員会 2026年1月付託
✅ あわせて確認しておきたいこと
・死因贈与・遺贈・寄附を契約の条件にしていないか
・死後事務委任契約に「委任者が死亡しても契約は終了しない」旨が明記されているか
・年1回以上、預託金残高の明細報告がある仕組みになっているか
・解約の申出先・手順・必要書類が書面で確認できるか
「身元保証人がいない」と入院を断られたら

「身元保証人がいないと入院できないのでは?」と心配されている方がとても多いです。安心してください。まず結論からお伝えします。
🏥 身元保証なしで入院を断ることは医師法違反
厚生労働省は平成30年4月27日付の通知で、「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関が入院を拒否することは医師法違反」と明示しています。入院を断られた場合は、この通知を根拠に病院の相談窓口や地域包括支援センターへ申し出てください。
出典:厚生労働省 平成30年4月27日付通知
医療行為の同意は本人だけの権利
入院手続きの際、病院が実際に求めているのは「緊急連絡先の指定」「費用の支払い保証」「退院時の身柄引き取り」といった手続き上のことです。これらは終身サポート事業者が代行できます。
ただし、「医療行為への同意」は別の話です。手術をするかどうか、どんな治療を受けるかを決める権限は、本人だけにあります。家族であっても、事業者であっても、成年後見人であっても、医療行為への同意はできません。だからこそ、自分が判断できる今のうちに意思を書面に残しておくことが大切なんです。
判断能力の状態によって、対応は変わる
厚生労働省が2019年6月に策定した「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」というものがあります。難しいタイトルですが、内容はシンプルです。判断能力の状態に応じた対応を3パターンで示しています。
| 状況 | 対応の原則 |
|---|---|
| 判断能力が十分な場合 | 本人が意思決定。緊急時の希望をかかりつけ医・事業者と書面で共有しておく |
| 成年後見制度を利用中の場合 | 後見人が診療契約の締結・医療費の支払いを担う。ただし医療行為への同意は含まない |
| 判断能力が低下・後見人なしの場合 | 地域包括支援センター・市区町村への相談。成年後見制度(法定後見)の利用を検討する |
一番大事なのは「判断能力が十分なうちに手を打てるかどうか」です。認知症が進んでからでは、任意後見制度も使えなくなります。元気なうちに行動することが、選択肢を広げておく唯一の方法です。
エンディングノートと事前指示書が「橋渡し」になる
終身サポート事業者は医療行為の同意はできませんが、あなたが書面に残した意思を医療機関に届けることはできます。
事前に「どんな治療を望むか」「延命治療は希望するかどうか」「誰に連絡してほしいか」をエンディングノートや事前指示書に書いておく。それを事業者・かかりつけ医・地域包括支援センターに預けておく。この準備があるかどうかで、いざというときの動き方が大きく変わります。
終身サポート契約を検討しているということは、「自分が動けなくなったときの備え」を真剣に考えておられるということです。エンディングノートは、その備えの中心になるものです。
📓 エンディングノートの作成・保管をまだお済みでない方へ
酔いどれが制作したnoteのパッケージでは、エンディングノートの書き方から保管方法、家族への引き継ぎ設計まで、実務的な手順をまとめています。記録シートもついていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【2026年8月対応・記録シート追加】エンディングノート&実務ガイドのパッケージ、家族が迷わない引き継ぎ設計(note)
契約する前に、まず公的サービスを確認しよう

終身サポート事業者と契約する前に、一度立ち止まって確認してほしいことがあります。自分が必要としているサービスの一部が、公的な仕組みで対応できないかどうかです。
3つの公的制度を表で比較する
| 制度名 | 主な内容 | 相談・申込窓口 |
|---|---|---|
| 日常生活自立支援事業 | 金銭管理・日用品の購入・行政手続きの補助など、日常生活の支援を低コストで提供 | 市区町村の社会福祉協議会 |
| 任意後見制度 | 判断能力があるうちに、信頼できる人を後見人候補として自分で選んで契約しておく | 公証役場・地域包括支援センター |
| 法定後見制度 | 判断能力が低下したあとに、家庭裁判所が後見人を選任して財産管理・法律行為を支援 | 家庭裁判所 |
民間の終身サポートに比べると「できることが限られている」というデメリットはあります。それでも費用面では大きな違いがあります。まず公的な仕組みで対応できる部分を確認したうえで、足りない部分を民間サービスで補う。この順序で考えることが、賢い選び方です。
💡 まず地域包括支援センターに相談してみよう
「どの制度が自分に合うか」「近くに頼れる窓口はあるか」という相談も、地域包括支援センターが無料で対応してくれます。民間事業者の契約を急かされているときこそ、一度センターに立ち寄って話を聞いてみてください。
困ったときの相談先
公的サービスで対応できる部分を確認したうえで、それでも迷ったとき、または契約後にトラブルが起きたとき。「どこに電話すればいいかわからない」という方のために、頼れる相談窓口をまとめておきます。
| 機関・窓口 | 主な役割 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 最寄りの消費生活センターにつないでもらえる。契約トラブルの初動相談に | 188(いやや) |
| 国民生活センター | 全国の消費生活相談情報を集約。情報提供・あっせんを担う | https://www.kokusen.go.jp/ |
| 法テラス | 解約交渉・損害賠償の法律相談。収入基準を満たせば無料相談あり | 0570-078374 |
| 地域包括支援センター | 公的サービスの案内・成年後見制度の相談・高齢者の総合的な生活相談 | 市区町村窓口で確認 |
| 消費者庁 | ガイドライン・利用者向けチェックリストの公表元 | https://www.caa.go.jp/ |
「188(いやや)」は全国共通の番号です。どこに電話すればいいかわからないときは、まずここに電話すれば最寄りの消費生活センターにつないでもらえます。番号だけでも覚えておいてください。
まとめ
📌 後編のポイントをまとめます
・預託金は信託口座での分別管理があるかどうかが、事業者選びで最も重要な判断基準
・解約返金の条件は「計算式」で書面に明示されているか。「協議のうえ決定」は要注意
・身元保証なしで入院を断ることは医師法違反。判断能力があるうちに意思を書面に残す
・まず地域包括支援センターで公的サービスを確認してから、民間との組み合わせを考える
・困ったときの第一歩は「188(いやや)」に電話する
📋 終身サポート契約チェックリストをnoteで公開
消費者庁ガイドライン別紙30項目を利用者視点で整理した確認リストを、noteで公開しました。「契約前の事業者選定」「死後事務の内容確認」「医療・入院の備え」「契約後の定期確認」の4カテゴリ、30項目を1枚で確認できる構成です。
まいど、酔いどれです。 いきなりですが、ちょっと怖い話を聞いてください。 全国2,700人の高齢者が、信頼して預けて…
おおきに。
