まいど、酔いどれです。
このところ「70歳以上の医療費の窓口負担を引き上げる」というニュースを、新聞やテレビで見かけるようになりました。自民党と日本維新の会が、高齢者が医療機関の窓口で支払う負担割合を、いまより重くする方向で話し合いを始めた、という内容です。
こういう話が出てくると、いちばん気になるのは「で、結局うちはどうなるの」というところやと思います。私のところにも、Mac教室に来てくださる年配の生徒さんから「自分らの医療費、上がるんですか」と聞かれることが増えました。
そこで今回は、報道されている内容を整理したうえで、多くの方がいちばん知りたいであろう3つに絞ってお話しします。
この記事でわかること
・現在70歳以上の人に影響があるのか
・75歳以上の人に影響があるのか
・いま何歳の人から影響が及ぶのか
先に、いちばん大事なこと
2026年6月の時点で、この話はまだ何も決まっていません。「こういう案が議論されている」という段階です。ここを取り違えると不安だけが大きくなってしまいますので、落ち着いて読み進めていただけたらと思います。
いまの窓口負担はどうなっているか

まず、現在のしくみをおさらいします。医療機関の窓口で支払う自己負担の割合は、年齢と所得によって分かれています。
いまの窓口負担(年齢別の原則)
・69歳まで(現役世代)は原則3割
・70歳から74歳までは原則2割
・75歳以上は原則1割
ただし、70歳以上でも現役並みの所得がある方は3割を負担しています。さらに75歳以上では、現役並みではないけれど一定以上の所得がある方は2割という区分もあります。つまり、同じ75歳以上でも、所得によって1割・2割・3割が混在しているわけです。
今回の議論は、この「70歳以上は原則2割・1割」という軽めの負担を、現役世代と同じ3割に近づけていこう、という方向の話です。
なぜ今こういう話が出てきたのか

背景には、現役世代の社会保険料の重さがあります。75歳以上の方の医療費は、患者さんの窓口負担を除いた給付費のうち、おおよそ5割を公費(税金)、1割を75歳以上ご本人の保険料、残りの4割を主に現役世代が納める保険料で支えています。
高齢化が進むと、この4割を負担する現役世代の保険料がどんどん重くなります。そこで「高齢者にも、支払う力に応じて少し多めに負担してもらえないか」という議論につながっているわけです。自民・維新は連立政権の合意書に13項目の社会保障改革を盛り込み、2026年度中に具体的な制度設計をすると決めています。
問い① 現在70歳以上の人に影響があるのか

結論 維新の段階的な案を前提にすると、すでに70歳以上の方への急な変更は想定されていません。ただし、どの案が採用されるか次第で、影響が残る可能性はあります。
報道によると、維新は高齢者の窓口負担を原則3割に引き上げるよう求めています。ただし維新が示したのは、いますぐ全員を3割にするのではなく、段階的に広げていく案です。具体的には、いま60歳の人が70歳になっても3割のまま続けるようにし、15年後に75歳になる人から原則3割へ移していく、というイメージが示されています。
この維新案の考え方でいくと、すでに70歳以上になっている方には、すぐに大きな変更は想定されていません。新しく70歳になる世代から順番に対象を広げていくかたちだからです。
ただし、ここで安心しきってしまうのは早いです。理由は2つあります。
1つめは、維新案がそのまま通るとは限らないことです。財務省は「年齢に関係なく原則3割にすべき」という、より踏み込んだ立場をとっています。もしこちらの考え方が強まれば、現在70歳以上の方にも影響が及ぶ可能性は残ります。
2つめは、厚生労働省が別のルートで、75歳以上向けの見直し案を用意していることです。これは次の問い②で詳しくお話しします。
問い② 75歳以上の人に影響があるのか
結論 一定以上の所得がある方は、影響を受ける可能性があります。所得が低い多くの方は、当面は原則1割が維持される見込みです。
厚生労働省は、75歳以上について、いまの1割・2割・3割に加えて、1.5割や2.5割といった新しい負担割合をつくる案を検討しています。また、現在2割や3割を負担してもらう人の年収の基準を下げて、対象を広げる案も出ています。
これがそのまま実現すると、いま75歳以上で一定以上の所得がある方は、負担割合が今より重くなる可能性があります。一方で、年金収入だけで暮らしておられるような、所得が低い多くの方については、当面は原則1割が維持される見込みが強いと考えられます。会合でも、低所得の方への配慮を求める声が出ています。
注意 これもあくまで案の段階です。どの所得ラインで線を引くのかが決まらないと、ご自身が対象になるかどうかは判断できません。
問い③ いま何歳の人から影響が及ぶのか

ここがいちばん気になるところかもしれません。これも案によって変わるので、2つの代表的な考え方を並べてみます。
維新の段階的な案の場合
記事で示されたのは、いま60歳の人が70歳になっても3割のまま続け、15年後に75歳になる時点でも原則3割に、というイメージです。つまり継続的に影響を受けていくのは、これから70歳を迎えていく世代、おおむね今の60代以下、とくに50代から60代前半の方が中心になります。すでに70歳を超えている方への急な変更は想定されていません。
財務省の案の場合
「70歳未満の人が70歳になるときに、3割のまま続ける」という考え方です。この場合は、いま69歳以下の方が、70歳になったタイミングで影響を受けることになり、維新案よりも早く、広い範囲に及ぶ可能性があります。
自民党はというと、いっぺんに3割へ引き上げることには慎重な意見が目立つ一方で、段階的な引き上げなら認めてもよい、という声も出ています。2027年春に統一地方選を控えていることもあり、急激な負担増は避けたいというのが正直なところのようです。
誰が、どんな主張をしているのか
整理すると、立場はおおきく3つに分かれています。
財務省
年齢によらず原則3割。70歳になるときに3割を続けるべきという、いちばん踏み込んだ立場。
日本維新の会
原則3割をめざすものの、いまの60歳が70歳になる時点からなど、長い時間をかけて段階的に。
自民党
一括での引き上げには慎重。段階的になら容認する声もある。
同じ「3割へ」という方向でも、いつから、誰からという中身に、かなりの隔たりがあるのが実情です。
では、いつから始まるのか
結論 実施の時期は、まだ確定していません。決まったとしても、明日からいきなり増えるという話ではありません。
現時点で見えているスケジュールは、おおよそ次のような流れです。
・2026年6月中に、自民・維新で社会保障改革の骨子案をとりまとめ
・2026年7月ごろ、政府の「骨太の方針2026」に反映
・2026年度内(2027年3月まで)に、具体的な制度設計をまとめる予定
・2027年度に結論を得て、法改正の手続きへ
・実際に新しい負担割合が始まるのは、早くても2028年度以降になる見込み
つまり、仮に引き上げが決まったとしても、少なくとも数年の準備期間があると考えてよさそうです。
「1割が3割」になると、家計はどれくらい変わるのか

数字だけ見ると、1割が3割になれば単純計算で窓口負担は3倍です。これは確かに大きな変化に見えます。ただ、ここで知っておいていただきたいのが高額療養費制度です。
ポイント 高額療養費制度は、1か月の自己負担が一定の上限を超えた分を払い戻すしくみです。上限は所得に応じて決まり、所得が低い方ほど低く設定されています。ですから、自己負担が青天井に3倍になるわけではありません。
一方で、上限に届かないような日常的な通院やお薬代については、負担割合が上がればその分だけ確実に増えます。月に何度か通院しておられる方ほど、影響を感じやすいということです。なお、高額療養費制度そのものも見直しの議論が進んでいますので、こちらも合わせて見ておきたいところです。
いま、私たちにできること
まだ何も決まっていない以上、慌てて何かをする必要はありません。そのうえで、私はこんな心づもりをしておけば十分やと思っています。
・7月ごろの「骨太の方針」と、2026年度内の制度設計の報道を、落ち着いて見守る
・ご自身やご家族(とくに親御さん)の現在の負担割合と、所得の区分を一度確認しておく
・かかりつけ医やジェネリック医薬品、自治体の健診などを、無理のない範囲で上手に使う
・毎月の固定費、とくに使っていないサブスクなどを見直して、家計に少し余白をつくっておく
制度がどう転んでも、家計に少し余裕をつくっておくことは、決してむだになりません。
おことわり 私は制度の専門家ではありません。ご自身の負担割合や所得区分の正確なところは、お住まいの市区町村の窓口や、加入している健康保険の窓口で確認していただくのが確実です。
まとめ
最後に、今回の3つの問いへの答えを、いまわかる範囲でまとめます。
現在70歳以上の人に影響があるのか
維新の段階的な案を前提にすると、すでに70歳以上の方への急な変更は想定されていません。ただし財務省案や厚労省の見直し次第では、影響が残る可能性もあります。
75歳以上の人に影響があるのか
一定以上の所得がある方は、新しい負担割合や対象拡大で影響を受ける可能性があります。所得が低い多くの方は、当面は原則1割が維持される見込みです。
いま何歳の人から影響が及ぶのか
維新案なら、おおむね今の50代から60代前半が中心。財務省案なら、今69歳以下の方が70歳になる時点から、より早く広く及ぶ可能性があります。
いずれにしても、いまはまだ議論の途中です。不確かな情報に振り回されず、正式に決まった内容を確かめながら、落ち着いて備えていきましょう。私もこのテーマは続報を追いかけて、動きがあればまたお伝えします。
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老後のお金と暮らしの備えについては、エンディングノート&実務ガイドパッケージでも詳しくまとめています。よろしければのぞいてみてください。
おおきに。