【2026年完全版】自宅で完結!「デジタル公正証書遺言」活用ガイド

「遺言書を作りたいけれど、公証役場まで行くのが大変で…」

そんなお悩みを抱えていらっしゃる方に、うれしいお知らせがあります。

2025年10月1日から、公正証書遺言の作り方が大きく変わりました。これまでは公証役場に出向くことが当たり前でしたが、新しい制度では自宅にいながら、パソコンの画面越しに遺言書を作成できるようになったのです。

この記事では、新しく始まった「リモート公正証書遺言」の仕組みについて、わかりやすくご説明していきます。

目次

はじめに|公証役場に行かなくても遺言書が作れる時代になりました

「遺言書を残しておきたい」

ご家族への想いを形にしたい、相続でもめないようにしておきたい。そうお考えの方は多いのではないでしょうか。

なかでも「公正証書遺言」は、公証人という法律の専門家が作成に関わるため、形式の不備で無効になる心配がなく、もっとも確実な遺言の方法として知られています。

しかし、これまでの公正証書遺言には、ひとつ大きなハードルがありました。

「公証役場まで足を運ばなければならない」ということです。

足腰が弱くなって外出が難しい方、入院中や施設にお住まいの方、あるいはお近くに公証役場がない地域にお住まいの方にとって、この「出向く」という条件は、決して小さな負担ではありませんでした。

もちろん、公証人に出張してもらうという方法もありましたが、その場合は出張費用(日当や交通費)が別途かかり、経済的な負担も大きくなってしまいます。

ラストには、今回の図解入りの詳しい説明PDFがダウンロードできるようになっています、ぜひご活用ください。

2025年10月、制度が大きく変わりました

こうした状況を変えるために、2025年10月1日から新しい制度がスタートしました。

それが、「リモート方式による公正証書遺言の作成」です。

この新制度では、パソコンのビデオ通話機能(Web会議システム)を使って、ご自宅にいながら公証人とやり取りをしながら遺言書を作成することができます。

さらに、遺言書そのものも「紙」ではなく「電子データ」として作成・保管されるようになりました。署名も、実印を押すのではなく、画面上に指やペンで名前を書く「電子サイン」で行います。

つまり、印鑑も紙も不要。自宅から一歩も出ずに、法的に有効な公正証書遺言を作れる時代になったのです。

この記事でわかること

この記事では、新しいリモート公正証書遺言について、以下の内容を順番にご説明していきます。

  • リモート公正証書遺言とは何か、従来の方法との違い
  • どんな方にリモート方式がおすすめか
  • リモート方式の具体的なメリット(4つ)
  • 遺言書ができあがるまでの6つのステップ
  • 必要な機材と事前に準備すること
  • 利用する際の注意点と「向いていないケース」
  • 自筆証書遺言のデジタル化など、今後の動き

「パソコンは苦手だから自分には関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、ご安心ください。実際には、ご家族や専門家(司法書士など)にサポートしてもらいながら利用される方も多くいらっしゃいます。

まずは「こんな方法があるんだ」ということを知っていただくことが、第一歩です。

それでは、詳しく見ていきましょう。

リモート公正証書遺言とは?従来との違いを解説します

まずは、新しく始まった「リモート公正証書遺言」とは何か、従来の作り方とどこが違うのかを整理しておきましょう。

そもそも「公正証書遺言」とは

公正証書遺言とは、公証人(こうしょうにん)という国の認めた法律の専門家に作成してもらう遺言書のことです。

遺言書にはいくつかの種類がありますが、公正証書遺言には次のような特長があります。

  • 形式不備で無効になる心配がない(専門家がチェックするため)
  • 原本が公証役場に保管される(紛失や改ざんの心配がない)
  • 家庭裁判所での「検認」手続きが不要(相続開始後すぐに使える)

このように信頼性が高いことから、「確実に遺言を残したい」という方に選ばれてきました。

従来の方法:公証役場に「出向く」のが原則でした

これまで公正証書遺言を作るためには、原則として遺言者ご本人が公証役場に出向く必要がありました。

さらに、公正証書遺言の作成には「証人2名」の立ち会いが法律で義務づけられています。そのため、遺言者と証人2名、そして公証人の合計4名が同じ場所に集まる必要があったのです。

外出が難しい方のために、公証人が病院や自宅に出張してくれる制度もありましたが、その場合は「出張日当」や「交通費」が別途かかり、費用が大きくふくらむことがありました。

新しい方法:自宅からオンラインで作成できるようになりました

2025年10月1日から始まった新制度では、この「出向く」という原則が大きく変わりました。

パソコンのビデオ通話機能(Web会議システム)を使って、自宅にいながら公証人とやり取りをしながら遺言書を作成できるようになったのです。

使用するのは「Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)」というWeb会議システムです。画面越しに公証人と顔を合わせ、遺言の内容を確認し、その場で署名を行います。

従来方式と新方式の違い:比較表

従来の方式と、新しいリモート方式の違いを表にまとめました。

項目 従来の方式 新しいリモート方式
作成場所 公証役場(または出張先) 自宅・病院・施設など
移動 必要 不要
証人の参加 同じ場所に集合 オンライン参加が可能
署名の方法 紙に手書き+実印を押印 画面上に電子サイン
本人確認 印鑑証明書+実印 マイナンバーカード等
遺言書の原本 電子データ(PDF)
原本の保管 公証役場の金庫 クラウド上のシステム

このように、「紙」「印鑑」「対面」という従来の常識が、「電子データ」「電子署名」「オンライン」へと大きく変わったのです。

法的な効力はまったく同じです

「オンラインで作った遺言書でも、ちゃんと有効なの?」

そう心配される方もいらっしゃるかもしれません。

ご安心ください。リモート方式で作成した公正証書遺言も、従来の対面方式で作成したものと法的な効力はまったく同じです。

民法や公証人法といった法律が改正され、リモート方式による作成が正式に認められました。つまり、国が「この方法で作っても有効ですよ」と認めた、れっきとした法的手続きなのです。

こんな方におすすめ!リモート方式が向いている人

リモート公正証書遺言は、すべての方が利用できる制度です。しかし、特に「従来の方法では難しかった」という方にとって、大きな助けとなります。

ここでは、リモート方式が特におすすめの方を具体的にご紹介します。

① 外出が難しい方

もっとも恩恵を受けるのは、公証役場への外出が困難な方です。

  • 足腰が弱くなり、遠出がつらい方
  • 車いすをご利用の方
  • 入院中の方、療養中の方
  • 介護施設や高齢者住宅にお住まいの方

これまでは、こうした方が公正証書遺言を作ろうとすると、公証人に出張を依頼するしかありませんでした。出張には追加費用がかかるうえ、日程調整にも時間がかかります。

リモート方式なら、ベッドの上からでも、施設のお部屋からでも、遺言書を作成することができます。

② お近くに公証役場がない方

公証役場は全国に約300か所ありますが、すべての市区町村にあるわけではありません。

  • 離島にお住まいの方
  • 山間部や過疎地域にお住まいの方
  • 最寄りの公証役場まで片道1時間以上かかる方

こうした地域にお住まいの方にとって、公証役場への往復は大きな負担です。

リモート方式なら、インターネット環境さえあれば、どこにお住まいでも利用することができます。

③ 海外にお住まいの方

お子さんの仕事の都合などで、海外で暮らしているシニアの方も増えています。

これまで、海外から日本の公正証書遺言を作成するのは非常に大変でした。わざわざ帰国するか、日本にある一部の領事館で手続きをする必要があったからです。

リモート方式であれば、海外のご自宅から日本の公証人とオンラインでつながり、遺言書を作成できる可能性が広がりました。

※時差や通信環境の問題があるため、事前に公証役場への相談が必要です。

④ 感染症が心配な方

新型コロナウイルスの流行以降、「なるべく人混みを避けたい」「外出時の感染が心配」という方は少なくありません。

リモート方式なら、自宅から一歩も出ずに手続きを完了できます。感染リスクを避けながら、安心して遺言書を作成することができます。

⑤ 特定の相手と顔を合わせたくない方

公正証書は遺言だけでなく、離婚に伴う養育費の取り決めなどにも使われます。

DV(家庭内暴力)の被害を受けた方など、相手と同じ空間にいることが難しいケースでは、これまで手続き自体をためらう方もいらっしゃいました。

リモート方式であれば、相手と物理的に同席することなく、画面越しに手続きを進めることが可能です。

⑥ 証人の手配に困っている方

公正証書遺言には、証人2名の立ち会いが必要です。

しかし、「頼める知人がいない」「子どもや親族には内容を知られたくない」という方も多くいらっしゃいます。

リモート方式では、司法書士や行政書士などの専門家が、自分の事務所からオンラインで証人として参加できます。専門家に証人を依頼しやすくなり、日程調整もスムーズになります。

「パソコンが苦手」でも大丈夫です

ここまで読んで、「自分はパソコンが苦手だから難しそう…」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

たしかに、リモート方式にはパソコンやWeb会議システムの操作が必要です。ご自身だけで対応するのが難しい場合もあるでしょう。

しかし、ご家族にサポートしてもらったり、司法書士などの専門家に自宅まで来てもらい、機材の準備や操作を手伝ってもらうことも可能です。

「パソコンが使えないから」とあきらめる必要はありません。周囲のサポートを受けながら利用されている方も、実際に多くいらっしゃいます。

リモート方式の4つのメリット

リモート公正証書遺言には、従来の方法にはなかった多くのメリットがあります。

ここでは、特に大きな4つのメリットをご紹介します。

メリット① 自宅・病院・施設から作成できます

リモート方式の最大のメリットは、場所を選ばずに遺言書を作成できることです。

ご自宅のリビングから、入院中の病室から、あるいは介護施設のお部屋から。インターネットにつながる環境があれば、どこからでも手続きを進めることができます。

これまで、外出が難しい方が公正証書遺言を作ろうとすると、公証人に出張を依頼する必要がありました。その場合、公証人の日当(1日につき2万円)や交通費が別途かかり、費用が大きくふくらむことがありました。

リモート方式なら、こうした出張費用を節約できるという経済的なメリットもあります。

また、慣れ親しんだ環境でリラックスしながら手続きできるため、緊張せずに自分の意思を伝えやすいという声もあります。

メリット② 証人の手配がラクになります

公正証書遺言の作成には、証人2名の立ち会いが法律で義務づけられています。

従来は、遺言者と証人2名が同じ場所に集まる必要がありました。証人をお願いできる方を探し、全員の予定を合わせるのは、なかなか大変な作業です。

リモート方式では、証人もそれぞれ別の場所からオンラインで参加できます

たとえば、遺言者はご自宅から、証人Aは東京の事務所から、証人Bは大阪の事務所から、というように、全員がバラバラの場所にいても問題ありません。

司法書士や行政書士などの専門家に証人を依頼する場合も、先方が移動する必要がないため、日程調整がしやすく、交通費や謝礼を抑えられる可能性があります。

また、遠方にお住まいのご家族がオンラインで同席し、遺言作成の様子を見届けることも可能です(公証人の許可が必要です)。

メリット③ 実印・印鑑証明書が不要になります

従来の公正証書遺言では、本人確認のために実印と印鑑証明書を用意する必要がありました。

印鑑証明書を取得するには、お住まいの市区町村の窓口に行くか、マイナンバーカードを使ってコンビニで発行する必要があります。これが意外と手間だった、という方も多いのではないでしょうか。

リモート方式では、実印も印鑑証明書も不要です。

本人確認は、マイナンバーカードや運転免許証などの顔写真付き身分証明書をカメラに映して行います。公証人が画面越しに、証明書の写真とご本人の顔を照合して確認します。

署名も、紙に書くのではなく、タブレットやパソコンの画面上に指やペンで名前を書く「電子サイン」で行います。

「ハンコを探す」「印鑑証明書を取りに行く」といった準備の手間がなくなるのは、大きなメリットです。

メリット④ 災害や紛失のリスクから守られます

リモート方式で作成された公正証書遺言は、紙ではなく電子データ(PDF)として保管されます。

従来の紙の遺言書は、公証役場の金庫に保管されていました。もちろん厳重に管理されていますが、万が一の大規模災害などで建物ごと被害を受けるリスクはゼロではありません。

電子データで作成された遺言書は、国が管理する堅牢なクラウドシステムに保管されます。複数の場所にバックアップされているため、災害や火災で失われる心配がほとんどありません。

また、相続が発生した際には、遺言書の「正本」や「謄本」を電子データで受け取ることができます。

将来的には、銀行や法務局での相続手続きをオンラインで進められる可能性も広がっており、相続人の負担軽減にもつながると期待されています。

メリットまとめ

メリット 内容
① 場所を選ばない 自宅・病院・施設どこからでもOK。出張費用も節約できます
② 証人の手配がラク 証人もオンライン参加OK。日程調整がスムーズになります
③ 実印・印鑑証明書が不要 マイナンバーカード等と電子サインで完結します
④ 災害・紛失リスク軽減 電子データでクラウド保管。安全性が高いです

デジタル公正証書遺言ができるまで:6ステップの完全ロードマップ

「リモートで遺言書を作る」と聞いても、具体的にどのような流れで進むのか、イメージしにくい方も多いのではないでしょうか。

ここでは、リモート公正証書遺言ができあがるまでの流れを、6つのステップに分けてわかりやすくご説明します。

全体の流れを把握しておくことで、安心して手続きに臨むことができます。

【全体の流れ】

ステップ1 電子嘱託(申し込み)
ステップ2 文案の作成と事前打ち合わせ
ステップ3 本人確認の実施
ステップ4 ウェブ会議による作成手続き
ステップ5 電子サイン・電子署名
ステップ6 電子正本・謄本の受け取り

ステップ1:電子嘱託(申し込み)──インターネットを通じた事前依頼

最初のステップは、公証役場への「嘱託(しょくたく)」、つまり作成の申し込みです。

従来は、公証役場に電話をかけたり、直接窓口を訪問して依頼していました。リモート方式では、インターネットを通じて申し込みを行うことができます。

具体的には、以下のような流れになります。

1. 対応している公証役場を探す
すべての公証役場がリモート方式に対応しているわけではありません。まずは、お近くの公証役場に電話やメールで問い合わせ、リモート作成に対応しているか確認しましょう。

2. リモート方式の利用を申し出る
「リモート方式で作成したい」という希望を伝えます。公証人が「リモート方式が適切かどうか」を判断するため、外出が困難な理由(高齢、病気、遠方在住など)を説明します。

3. 電子的に依頼を送信する
マイナンバーカードなどを使った電子署名で、正式な依頼を行います。

ステップ2:文案の作成と事前打ち合わせ──公証人とのオンラインやり取り

申し込みが受理されると、次は遺言書の「文案(下書き)」を作成する段階です。

公証人と何度かやり取りをしながら、遺言の内容を固めていきます。

1. 希望する内容を伝える
「自宅は長男に相続させたい」「預金は妻と子どもで半分ずつ」など、ご自身の希望を公証人に伝えます。メールや電話、あるいはオンライン面談で行います。

2. 公証人が文案を作成する
伝えた内容をもとに、公証人が法的に正しい形式で遺言書の文案を作成してくれます。

3. 内容を確認・修正する
できあがった文案を確認し、修正したい点があれば伝えます。納得できる内容になるまで、何度でも調整できます。

この段階でしっかり内容を詰めておくことで、当日の手続きがスムーズに進みます。

ステップ3:本人確認の実施──公的個人認証による厳格な本人確認

遺言書は非常に重要な法律文書です。「本当に本人が作成しているのか」を厳格に確認する必要があります。

リモート方式では、以下の方法で本人確認が行われます。

1. 顔写真付き身分証明書の提示
マイナンバーカードや運転免許証などを、Webカメラに映して公証人に見せます。

2. 顔写真との照合
公証人が、身分証明書の写真と画面に映っているご本人の顔を見比べて、同一人物であることを確認します。

3. マイナンバーカードによる電子認証
マイナンバーカードに搭載されている「電子証明書」を使って、本人であることをデジタル的にも証明します。

この厳格な本人確認があるからこそ、「なりすまし」を防ぎ、遺言書の信頼性が担保されるのです。

ステップ4:ウェブ会議による作成手続き──内容の読み聞かせと最終意思確認

いよいよ、遺言書を正式に作成する日です。

当日は、Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)というWeb会議システムを使って、公証人・遺言者・証人2名がオンラインでつながります。

手続きの流れは以下の通りです。

1. 参加者の確認
公証人が、遺言者と証人2名の本人確認を行います。全員の顔がカメラに映っていることを確認します。

2. 遺言内容の読み聞かせ
公証人が、作成した遺言書の内容を画面共有しながら読み上げます。遺言者は、内容が自分の意思と合っているかを確認します。

3. 最終意思の確認
公証人から「この内容でよろしいですか?」と確認があります。遺言者が「はい、間違いありません」と答えることで、最終的な意思確認が完了します。

4. 証人による確認
証人2名も、遺言者が自分の意思で遺言を作成していることを確認し、その旨を述べます。

ステップ5:電子サイン・電子署名──クラウド上での署名による原本完成

意思確認が終わったら、いよいよ署名です。

従来は紙に署名して実印を押していましたが、リモート方式では電子的な署名を行います。

1. 電子サイン(手書き署名)
公証人から「署名依頼メール」が届きます。そのメールに記載されたリンクを開くと、遺言書のPDFファイルが表示されます。

タブレットやペンタブレットを使って、画面上に自分の名前を手書きします。これが「電子サイン」です。紙に書くのと同じように、自筆で署名します。

2. 電子署名(デジタル認証)
遺言者の電子サインが完了したら、証人2名も同様に電子サインを行います。

最後に、公証人が電子署名を付与します。これは暗号技術を使った署名で、「この文書は改ざんされていない」ことを証明するものです。

3. 原本の完成
全員の署名が揃い、公証人の電子署名が付与されると、遺言書の原本が電子データとして完成します。この原本は、国が管理するクラウドシステムに保管されます。

ステップ6:電子正本・謄本の受け取り──ダウンロードによるスマートな交付

遺言書が完成したら、「正本」や「謄本」(原本の写し)を受け取ります。

従来は紙の書類を公証役場の窓口で受け取るか、郵送してもらっていました。リモート方式では、電子データとしてダウンロードすることができます。

1. ダウンロード用のメールが届く
公証役場から、正本・謄本をダウンロードするためのメールが届きます。

2. 電子データとして保存
パソコンやスマートフォンに、PDF形式の遺言書をダウンロードして保存します。

3. 必要に応じて印刷も可能
電子データを印刷して、紙の形で保管することもできます。

将来、相続が発生した際には、この電子データを使って、銀行や法務局での手続きを進めることになります。オンラインで手続きが完結できる可能性も広がっています。

6ステップのまとめ

ステップ 内容 ポイント
1. 電子嘱託 インターネットで申し込み 対応している公証役場を探しましょう
2. 文案作成 公証人と内容を打ち合わせ 納得いくまで調整できます
3. 本人確認 マイナンバーカード等で認証 なりすまし防止のため厳格に行います
4. ウェブ会議 読み聞かせと意思確認 Teamsで公証人・証人とつながります
5. 電子サイン 画面上に手書きで署名 タブレット等が必要です
6. 受け取り 電子データでダウンロード 紙に印刷して保管も可能です

必要な機材と事前準備をチェック

リモート公正証書遺言を作成するには、いくつかの機材を揃え、事前の準備を整えておく必要があります。

「何を用意すればいいの?」「どこに相談すればいいの?」という疑問にお答えします。

揃えるべき機材一覧

リモート方式では、公証人と画面越しにやり取りをしながら、電子データに署名を行います。そのため、通常のビデオ通話以上の機材が必要になります。

【必須の機材】

機材 説明
パソコン Windows 10/11、または最新のmacOSを搭載したもの。スマートフォンやタブレットだけでの参加は原則できません。
Webカメラ 顔を映して本人確認を行うために必要です。パソコン内蔵のものでも構いません。
マイク・スピーカー 公証人と会話するために必要です。パソコン内蔵のものでも構いません。
署名用の入力機器 画面上に手書きで署名するために必要です。タッチパネル対応のパソコン、またはペンタブレットを用意します。
タッチペン(スタイラスペン) 画面に文字を書くためのペンです。指でも書けますが、ペンのほうがきれいに署名できます。
安定したインターネット環境 映像と音声が途切れないよう、Wi-Fiや有線LANなど安定した回線が必要です。
メールアドレス Web会議の招待メールや、署名依頼メールを受け取るために必要です。

【パソコンについての補足】

「なぜスマートフォンではダメなの?」と思われるかもしれません。

リモート方式では、公証人が「画面共有された遺言書」と「署名している本人の様子」を同時に確認する必要があります。スマートフォンの小さな画面では、この確認が難しいため、パソコンが必須とされています。

【署名用機器についての補足】

「ペンタブレット」とは、パソコンに接続して使う、文字や絵を描くための入力機器です。イラストレーターの方がよく使っているものです。

一般のご家庭にはあまりない機器かもしれません。しかし、家電量販店やインターネット通販で購入することができます。価格は数千円から1万円程度のものが多いです。

ペンタブレットをお持ちでない場合は、タッチパネル対応のパソコンを使う方法もあります。画面に直接指やペンで書き込めるタイプのパソコンです。

どうしても機材を揃えるのが難しい場合は、後述するように専門家にサポートを依頼する方法もあります。

【機材チェックリスト】

以下のチェックリストで、必要な機材が揃っているか確認してみましょう。

パソコン(Windows 10/11 または macOS)
Webカメラ(内蔵または外付け)
マイク・スピーカー(内蔵または外付け)
署名用機器(タッチパネルPC または ペンタブレット)
タッチペン(スタイラスペン)
安定したインターネット環境(Wi-Fi または 有線LAN)
メールアドレス(パソコンで確認できるもの)

公証役場への相談・予約の流れ

機材を揃えるだけでなく、公証役場との事前のやり取りも必要です。

【ステップ1】対応している公証役場を探す

すべての公証役場がリモート方式に対応しているわけではありません。「指定公証人」がいる公証役場でないと、リモート作成はできません。

まずは、お近くの公証役場に電話やメールで問い合わせてみましょう。日本公証人連合会のホームページでも、公証役場の一覧を確認できます。

【ステップ2】リモート方式の利用を申し出る

公証役場に連絡したら、「リモート方式で公正証書遺言を作成したい」と伝えます。

このとき、公証人は「リモート方式が適切かどうか」を判断します。判断のポイントは以下の2つです。

① 必要性があるか

  • 高齢で外出が困難
  • 病気や障がいがある
  • 入院中・施設入所中である
  • 離島や遠方に住んでいる
  • 感染症対策が必要

このような事情があり、公証役場に出向くのが難しいことを説明します。

② 許容性があるか

  • 画面越しでも本人確認ができる
  • 判断能力に問題がない
  • なりすましや脅迫のリスクが低い

公証人が「この方はリモートでも問題なく手続きできる」と判断できることが条件です。

【ステップ3】証人を手配する

公正証書遺言には、証人2名の立ち会いが必要です。証人になれるのは、以下の条件を満たす方です。

  • 成人であること
  • 推定相続人(遺産を受け取る予定の方)ではないこと
  • 遺言で財産を受け取る方ではないこと

ご友人や知人に依頼することもできますが、司法書士や行政書士などの専門家に依頼することも一般的です。専門家であれば、リモート方式の操作にも慣れているため、安心です。

【ステップ4】本人確認書類を準備する

当日の本人確認のために、以下の書類を手元に用意しておきましょう。

  • マイナンバーカード(もっとも推奨)
  • 運転免許証
  • パスポート

顔写真付きの身分証明書をWebカメラに映して、公証人に見せることになります。

【ステップ5】事前にWeb会議システムを試しておく

当日になって「使い方がわからない」と慌てないよう、事前にMicrosoft Teamsの操作を試しておくことをおすすめします。

Teamsは、ブラウザ(Edge、Chrome、Safariなど)からも参加できますが、アプリをインストールしておくとスムーズです。ご家族や専門家と一緒に、練習しておくと安心です。

パソコンが苦手な方へ:専門家のサポートを活用しましょう

「機材を揃えるのが大変」「パソコンの操作が不安」という方は、司法書士や行政書士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

専門家に依頼すると、以下のようなサポートを受けられます。

  • 必要な機材を持って自宅に来てくれる
  • パソコンやWeb会議システムの操作を代わりにやってくれる
  • 証人として立ち会ってくれる
  • 遺言の内容についてもアドバイスしてくれる

費用はかかりますが、確実に手続きを進めることができます。「自分ひとりでは無理」とあきらめず、まずは相談してみてください。

事前準備チェックリスト

最後に、事前準備のチェックリストをまとめておきます。

リモート対応の公証役場を確認した
リモート方式の利用を申し出た
証人2名を手配した
本人確認書類(マイナンバーカード等)を用意した
必要な機材を揃えた
Web会議システム(Teams)の操作を試した
当日の流れを理解した

知っておきたい注意点と「利用できないケース」

リモート公正証書遺言には多くのメリットがありますが、誰でも無条件に利用できるわけではありません。

事前に知っておきたい注意点と、利用が難しいケースについてご説明します。

注意点① 公証人の「許可」が必要です

リモート方式を利用するには、公証人が「リモートでの作成が適切である」と認める必要があります。

「リモートでやりたい」と希望すれば、誰でも自動的に利用できるわけではありません。公証人が以下の点を確認し、問題ないと判断した場合にのみ利用できます。

確認項目 内容
必要性 公証役場に出向くことが難しい事情があるか
本人確認 画面越しでも確実に本人確認ができるか
意思確認 遺言者の判断能力に問題がないか
安全性 なりすましや脅迫のリスクがないか

特に、判断能力(認知機能)に不安がある場合は、対面での作成を求められることがあります。

画面越しでは、遺言者の細かな表情や様子を把握しにくいためです。「本当にご本人の意思なのか」「誰かに無理やり作らされていないか」を確認するために、対面のほうが適切と判断されるケースがあります。

注意点② 機材の準備にハードルがあります

先ほどご説明したとおり、リモート方式にはパソコン、Webカメラ、署名用のタッチパネルやペンタブレットなどの機材が必要です。

一般的なご家庭にはない機材もあるため、新たに購入が必要になる場合があります。

また、スマートフォンやタブレットだけでは参加できないという点も注意が必要です。「スマホなら持っている」という方でも、パソコンを用意する必要があります。

注意点③ ITスキルが求められます

リモート方式では、以下のような操作が必要になります。

  • Web会議システム(Microsoft Teams)への参加
  • 画面共有された文書の確認
  • 電子サインのためのメール操作
  • タブレットやペンタブレットでの署名

パソコンやインターネットの操作に慣れていない方にとっては、これらの操作が負担に感じられるかもしれません。

ただし、ご家族や専門家にサポートしてもらうことは認められています。操作を手伝ってもらいながら手続きを進めることができますので、「自分には無理」とあきらめる必要はありません。

注意点④ 通信トラブルのリスクがあります

インターネット回線の状態によっては、映像や音声が途切れてしまうことがあります。

手続きの途中で通信が切れてしまうと、最初からやり直しになる可能性もあります。安定したインターネット環境を用意しておくことが大切です。

可能であれば、Wi-Fiよりも有線LANのほうが安定します。また、当日は他の家族がインターネットを使う動画視聴などを控えてもらうと、回線が安定しやすくなります。

リモート方式が「向いていない」ケース

以下のようなケースでは、リモート方式よりも従来の対面方式のほうが適している場合があります。

【判断能力に不安がある場合】

認知症の症状がある方や、判断能力の低下が心配される方は、対面での作成を求められることが多いです。

公証人は、遺言者が「自分の意思で遺言を作成している」ことを確認する義務があります。画面越しでは、この確認が難しいと判断される場合があります。

ただし、判断能力に不安があっても、対面方式であれば公正証書遺言を作成できるケースは多くあります。まずは公証役場に相談してみてください。

【機材の準備やサポートが難しい場合】

必要な機材を揃えることができない、サポートしてくれる家族や専門家がいない、という場合は、リモート方式の利用が難しいかもしれません。

その場合でも、公証人に出張を依頼する方法があります。費用はかかりますが、自宅や病院、施設に公証人が来てくれて、対面で遺言書を作成することができます。

【複雑な遺言内容の場合】

財産の種類が多い、相続関係が複雑、条件付きの遺言にしたいなど、内容が複雑な場合は、対面でじっくり相談しながら作成したほうがよいこともあります。

もちろんリモートでも対応可能ですが、何度もやり取りが必要になる場合は、対面のほうがスムーズに進むケースもあります。

「自分はどちらが向いているか」迷ったら

リモート方式と対面方式、どちらが自分に向いているかわからない場合は、まず公証役場に相談してみることをおすすめします。

公証人が、ご事情をうかがったうえで、最適な方法を一緒に考えてくれます。

また、司法書士や行政書士などの専門家に相談するのもよい方法です。遺言の内容についてのアドバイスも含めて、トータルでサポートしてもらえます。

自筆証書遺言のデジタル化はいつ?今後の動き

ここまで、公正証書遺言のデジタル化・リモート作成についてご説明してきました。

では、もうひとつの代表的な遺言の方法である「自筆証書遺言」は、デジタル化されるのでしょうか?

今後の動きについてご紹介します。

現時点では「手書き」が必須です

自筆証書遺言とは、遺言者がすべて自分で書く遺言書のことです。

現在の法律では、自筆証書遺言は以下のルールを満たす必要があります。

  • 全文を自筆で書く(財産目録を除く)
  • 日付を自筆で書く
  • 氏名を自筆で書く
  • 押印する

つまり、パソコンやスマートフォンで作成した遺言書は、法的に無効です。

「手書きは大変」「字を書くのがつらい」という方にとって、この「自筆」のルールは大きなハードルとなっています。

法改正に向けた議論が進んでいます

こうした状況を受けて、法務省の法制審議会では、自筆証書遺言のデジタル化に向けた議論が本格的に進められています。

将来的には、以下のような変更が検討されています。

【検討されている内容①】パソコン・スマホでの作成を解禁

現在は手書きが必須ですが、パソコンやスマートフォンで遺言の全文を作成できるようにする案が検討されています。

これが実現すれば、高齢で文字を書くのが困難な方や、書き損じの修正が大変だった方にとって、大きな負担軽減になります。

【検討されている内容②】電子署名の活用

手書きの署名や押印に代わり、マイナンバーカードなどを使った電子署名を導入する案があります。

公正証書遺言のリモート方式と同様に、デジタル技術で本人確認を行う仕組みです。

【検討されている内容③】動画・音声の記録

遺言者が遺言の内容を読み上げている様子を録音・録画し、本人の真意であることを証明する方法も検討されています。

「本当に自分の意思で作成した」ということを、映像で残しておくイメージです。

【検討されている内容④】公的機関での保管

作成したデジタル遺言を、法務局などの公的機関のサーバーに保管する仕組みも議論されています。

現在も「自筆証書遺言書保管制度」という、法務局で自筆証書遺言を預かってもらえる制度がありますが、そのデジタル版のようなイメージです。

改ざんや紛失を防ぎ、相続発生時にスムーズに遺言書を確認できるようになることが期待されています。

実現時期はまだ未定です

自筆証書遺言のデジタル化については、まだ検討段階であり、具体的な法改正の時期は決まっていません

慎重に議論すべき課題もあります。

期待されるメリット 解決すべき課題
手書きの負担がなくなる なりすましをどう防ぐか
書き損じによる無効を減らせる データの改ざんをどう防ぐか
紛失や隠匿を防げる 高齢者のIT操作をどうサポートするか
相続手続きがスムーズになる 脅迫されて作成させられるリスクをどう防ぐか

これらの課題をクリアしながら、制度設計が進められています。

今できることは?

自筆証書遺言のデジタル化を待つのもひとつの選択肢ですが、「いつ実現するかわからない」というのが現実です。

「遺言書を残しておきたい」とお考えであれば、今すぐ利用できる方法として、以下の選択肢があります。

方法 特徴
公正証書遺言(リモート方式) 自宅から作成可能。確実性が高いです
公正証書遺言(対面方式) 従来どおり公証役場で作成します
自筆証書遺言+保管制度 手書きで作成し、法務局に預けます

特に、この記事でご紹介したリモート公正証書遺言は、2025年10月から利用できる新しい選択肢です。

「手書きは大変だけど、遺言は残しておきたい」という方は、ぜひ検討してみてください。

まとめ|まずは「対応している公証役場」を探すことから

ここまで、2025年10月から始まった「リモート公正証書遺言」について詳しくご説明してきました。

最後に、大切なポイントを振り返っておきましょう。

この記事のポイント

【リモート公正証書遺言とは】

  • 自宅にいながら、パソコンの画面越しに公正証書遺言を作成できる新しい制度です
  • 2025年10月1日からスタートしました
  • 法的な効力は従来の対面方式とまったく同じです

【こんな方におすすめ】

  • 外出が難しい方(高齢、病気、入院中、施設入所中など)
  • お近くに公証役場がない方(離島、山間部、遠方在住など)
  • 証人の手配に困っている方
  • 実印や印鑑証明書の準備が負担な方

【4つのメリット】

  • 自宅・病院・施設から作成できます
  • 証人の手配がラクになります
  • 実印・印鑑証明書が不要になります
  • 災害や紛失のリスクから守られます

【必要な準備】

  • パソコン、Webカメラ、マイク、署名用機器(タッチパネルまたはペンタブレット)
  • 安定したインターネット環境
  • マイナンバーカードなどの本人確認書類
  • 証人2名の手配

【注意点】

  • 公証人の許可が必要です
  • 判断能力に不安がある場合は対面方式を求められることがあります
  • 機材の準備やIT操作にサポートが必要な場合があります

最初の一歩は「相談」から

リモート公正証書遺言に興味を持たれた方は、まず「対応している公証役場を探す」ことから始めてみてください。

すべての公証役場がリモート方式に対応しているわけではありません。お近くの公証役場に電話やメールで問い合わせて、リモート作成が可能かどうか確認しましょう。

【公証役場を探す方法】

  • 日本公証人連合会のホームページで検索できます
  • 電話で「リモート方式に対応していますか?」と聞いてみましょう

また、「自分にはリモート方式が向いているかわからない」「パソコンの操作が不安」という方は、司法書士や行政書士などの専門家に相談するのもおすすめです。

遺言の内容についてのアドバイスから、機材の準備、当日の操作サポートまで、トータルで助けてもらえます。

「遺言書を残したい」と思ったときが、始めどきです

「遺言書を作ろう」と思っても、なかなか行動に移せないものです。

「まだ元気だから」「もう少し先でいいかな」と先延ばしにしているうちに、体調を崩してしまったり、判断能力が低下してしまったりすることもあります。

遺言書は、元気なうちに、しっかりとした判断ができるうちに作成しておくことが大切です。

リモート公正証書遺言という新しい選択肢が加わった今、以前よりもずっと作成しやすくなりました。

ご家族への想いを形にするために、ぜひこの機会に一歩を踏み出してみてください。

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出典・参考情報

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