【突然の介護に備える!いまから知っておきたい公的介護サービス一覧】第2回 自宅で受けられる介護サービス – 在宅介護の選択肢

このシリーズ「突然の介護に備える!いまから知っておきたい公的介護サービス講座」の第2回では、自宅で受けられる介護サービスについて解説します。ご自宅での生活を続けながら介護サービスを利用する方法を知ることで、ご本人の望む暮らし方を実現するヒントが得られます。

【前回の振り返り】
第1回では介護保険制度の基本的な仕組みや、介護サービスを利用できる条件などの基礎知識を学びました。介護保険は40歳以上の加入者が支払う保険料と公費で運営され、65歳以上の方や特定疾病のある40~64歳の方が要介護認定を受けることでサービスを利用できることを確認しました。

【この回で学べること】

  • 自宅に介護スタッフが訪問するサービスの種類と内容
  • 施設に通って受けるデイサービスの活用法
  • 短期間だけ施設に入所できるショートステイの利用方法
  • 在宅介護サービスの上手な選び方と組み合わせ方
📺 動画でも解説しています
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1. 訪問サービス:自宅での介護支援

訪問介護(ホームヘルパー)

訪問介護は、ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行うサービスです。

  • 身体介護の例
  •  - 食事、入浴、排泄の介助
     - 衣服の着脱
     - 体位変換、移動の介助

  • 生活援助の例
  •  - 調理、洗濯、掃除などの家事
     - 生活必需品の買い物
     - ベッドメイキング

  • 訪問介護でできないこと
  •  - 本人以外の家族のための家事
     - 医療行為(医師の指示がない状態での服薬管理など)
     - 日常生活に直接関係のない行為(ペットの世話、庭の手入れなど)

訪問介護は、利用者の状態に合わせて、1日に複数回、またはひと月に数回など、柔軟に利用できるのが特徴です。

訪問入浴介護

訪問入浴介護は、浴槽を積んだ専用車で自宅を訪問し、入浴サービスを提供します。通常、看護師1名と介護職員2名の3人体制で行われます。

  • 対象となる方
  •  - 寝たきりなど自力での入浴が困難な方
     - 自宅の浴室が狭い、または段差があるなど住環境の問題で入浴が難しい方
     - 認知症などで一般の入浴施設の利用が難しい方

訪問入浴は身体的負担が大きいサービスのため、事前に主治医の確認が必要です。浴槽はコンパクトなものが多いですが、全身浴だけでなく部分浴(足浴など)も対応可能です。

訪問看護

訪問看護は、看護師や保健師、理学療法士などが自宅を訪問し、医療的ケアや健康管理を行います。

  • 主なサービス内容
  •  - バイタルサインの確認(血圧、体温、脈拍など)
     - 服薬管理の支援
     - 床ずれの処置や予防
     - 点滴、カテーテル管理
     - 痰の吸引や人工呼吸器の管理
     - 在宅リハビリテーション指導

訪問看護は主治医の指示に基づいて行われるため、医師との連携が密に取られていることが特徴です。病状の急変にも対応できるよう、24時間対応の訪問看護ステーションも増えています。

訪問リハビリテーション

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、日常生活の自立を目指したリハビリを行います。

  • 主なサービス内容
  •  - 歩行訓練や筋力トレーニング
     - 食事や入浴動作などの日常生活動作訓練
     - 嚥下(えんげ)機能訓練
     - 福祉用具の使い方指導
     - 自宅環境の評価と改善提案

自宅という実際の生活環境で行うリハビリは、実践的で効果的なことが多いです。また、介護する家族への介助方法の指導も行われます。

居宅療養管理指導

医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが自宅を訪問し、専門的な観点から療養上の管理や指導を行います。

  • サービス例
  •  - 医師・歯科医師:療養上の管理指導、介護サービス計画へのアドバイス
     - 薬剤師:薬の管理・指導、飲み忘れ防止の工夫
     - 管理栄養士:病状に合わせた食事指導
     - 歯科衛生士:口腔ケアの指導

特に薬剤師による居宅療養管理指導は、複数の医療機関からの処方薬の重複や相互作用を防ぐ効果があります。

2. 通所サービス(日帰り介護):デイサービスなどの利用

通所介護(デイサービス)

デイサービスは、日中、介護施設に通って食事、入浴、レクリエーションなどのサービスを受ける日帰りの介護サービスです。

  • デイサービスでの1日の一般的な流れ
  •  - 朝:自宅への送迎
     - 午前:健康チェック、入浴、レクリエーション
     - 昼:食事
     - 午後:レクリエーション、機能訓練
     - 夕方:自宅への送迎

  • デイサービスの主な効果
  •  - 利用者の社会参加と孤立防止
     - 生活リズムの維持 
     - 身体機能の維持・向上
     - 認知症の進行予防
     - 介護者の負担軽減(レスパイトケア)

デイサービスには一般型のほか、認知症対応型や機能訓練に特化したものなど、様々な特色があります。週に何回利用するかは、要介護度や本人・家族の希望によって調整できます。

通所リハビリテーション(デイケア)

デイケアは、介護老人保健施設や病院・診療所などで提供される通所サービスで、リハビリテーションに重点を置いています。

  • デイケアの特徴
  •  - 医師の管理下で専門職によるリハビリを受けられる
     - 身体機能や生活機能の維持・向上が目的
     - 脳梗塞後のリハビリや認知症ケアなど専門的プログラムが充実
     - 病院や診療所に併設されていることが多い

デイサービスに比べて医療的要素が強く、疾患別のリハビリプログラムが提供されることが特徴です。

選ぶ際のポイントと見学時の確認事項

  • 施設選びのポイント
  •  - 自宅からの距離と送迎の有無
     - 営業日(土日祝日の営業状況)
     - 提供サービスの内容(入浴の有無、リハビリの専門性など)
     - 施設の雰囲気や利用者の状況
     - スタッフの対応や専門性

  • 見学時の確認事項
  •  - 施設内の清潔さや安全性
     - スタッフの人数と資格
     - 食事の内容(アレルギー対応など)
     - レクリエーションの種類と頻度
     - 緊急時の対応方法

実際に見学することで、パンフレットだけではわからない施設の雰囲気や特色を確認できます。可能であれば複数の施設を見学し、比較検討することをおすすめします。

3. 短期入所サービス(ショートステイ):短期間の入所による負担軽減

短期入所生活介護と短期入所療養介護の違い

  • 短期入所生活介護(特別養護老人ホームなどでのショートステイ)
  •  - 特別養護老人ホームなどに短期間入所
     - 身体介護、食事、入浴などの日常生活上の世話が中心
     - 医療的ケアの必要性が低い方に適している

  • 短期入所療養介護(老人保健施設などでのショートステイ)
  •  - 介護老人保健施設や医療機関などに短期間入所
     - 医学的管理下での介護、機能訓練、療養上の世話が受けられる
     - 医療的ケアが必要な方や、リハビリテーションが必要な方に適している

利用者の状態や目的に応じて適切な方を選択することが重要です。

利用できる期間と予約のタイミング

  • 利用期間
  •  - 基本的には連続30日以内、年間では180日以内が目安
     - 要介護度や施設の状況により利用日数が調整されることもある

  • 予約のタイミング
  •  - 人気施設では1〜3ヶ月前からの予約が必要なケースも
     - 冠婚葬祭や介護者の入院など緊急時用に、事前に施設と関係を築いておくことが重要
     - 繁忙期(ゴールデンウィーク、お盆、年末年始)は特に早めの予約を

計画的な利用だけでなく、緊急時にも対応できるよう、複数の施設を押さえておくと安心です。

介護者のレスパイト(休息)としての活用法

ショートステイは、介護者の休息(レスパイトケア)として積極的に活用すべきサービスです。

  • 活用例
  •  - 介護者自身の通院や休養のため(月に1〜2回の定期利用)
     - 冠婚葬祭や旅行などの外出時
     - 介護疲れを感じた とき
     - 介護者自身の体調不良時

介護の継続には介護者自身の健康維持が不可欠です。無理をせず定期的にショートステイを利用することで、長期的な在宅介護が可能になります。

持ち物リストと準備のポイント

  • 基本的な持ち物
  •  - 介護保険証、医療保険証
     - お薬手帳と服用中の薬(数日分多めに)
     - 普段使用している介護用品(紙おむつなど)
     - 洗面用具、タオル類
     - 着替え(下着を含め日数分+予備)
     - コミュニケーションノート(特記事項や生活習慣の記録)

  • 準備のポイント
  •  - 持ち物には全て名前を記入
     - 本人が安心できる馴染みの物(写真、小物など)も持参すると良い
     - 薬は日付・時間帯ごとに仕分けしておく
     - 施設から指定された持ち物リストを確認する

初めて利用する際は特に、自宅での生活リズムや好み、注意点などを詳しく伝えておくことが大切です。

4. 在宅サービスの組み合わせ方と選択のポイント

要介護度別の利用限度額と自己負担

介護保険で利用できるサービスには、要介護度に応じた月々の限度額が設定されています。

  • 要介護度別の月額限度額(目安)
  •  - 要支援1:約5万円
     - 要支援2:約10万円
     - 要介護1:約17万円
     - 要介護2:約20万円
     - 要介護3:約27万円
     - 要介護4:約31万円
     - 要介護5:約36万円

サービス費用の自己負担は原則1割ですが、所得に応じて2割または3割となる場合もあります。限度額を超えたサービスを利用する場合は、超過分が全額自己負担となります。

生活リズムに合わせたサービス選びの考え方

  • 例:要介護3の方の週間プラン例
  •  - 月曜日:訪問介護(午前・身体介護)
     - 火曜日:デイサービス(9:00〜16:00)
     - 水曜日:訪問看護(午前)、訪問介護(夕方・身体介護)
     - 木曜日:デイサービス(9:00〜16:00)
     - 金曜日:訪問リハビリ(午前)、訪問介護(夕方・身体介護)
     - 土曜日:訪問介護(午前・身体介護)
     - 日曜日:家族介護

このように、利用者の状態や家族の状況に合わせて、様々なサービスを組み合わせることで、在宅生活を継続しやすくなります。

ケアマネジャーとの相談の進め方

  • 効果的な相談のポイント
  •  - 本人・家族の希望や生活状況を具体的に伝える
     - 現在困っていることや不安に思うことを整理しておく
     - サービス内容や費用について遠慮なく質問する
     - 将来的な状態変化も見据えた計画を一緒に考える

ケアマネジャーは介護サービスのコーディネーターです。遠慮せず相談し、定期的に情報共有することで、より適切なサービス利用につながります。

サービス提供事業者の選び方と確認すべきポイント

  • 選ぶ際のチェックポイント
  •  - スタッフの資格や経験
     - サービス提供の時間帯や曜日(緊急時の対応含む)
     - 利用者や家族の要望への柔軟性
     - 他の医療・介護サービスとの連携状況
     - 口コミや評判(地域包括支援センターに相談するのも良い)

サービスを開始してからも、定期的に評価し、必要に応じて変更や追加を検討することが大切です。

まとめ

  • 【今回のポイント】
  •  - 訪問系サービスは生活支援や医療ケアなど目的に応じて選べます
     - 通所サービスは介護者の負担軽減だけでなく、利用者の社会参加や機能維持に役立ちます
     - ショートステイは介護者の休息や冠婚葬祭など一時的な不在時に活用できます
     - 複数のサービスを組み合わせることで、無理なく在宅生活を続けられる環境を整えましょう

  • 【次回予告】
  • 第3回は「住まいの支援とお金 – 介護環境と費用面の対策」について解説します。福祉用具の選び方や住宅改修の補助、介護にかかる費用の目安と負担軽減制度などを紹介します。

お困りの時:
お住まいの地域の 地域包括支援センターや市区町村窓口に相談​。
厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索サイトで「都道府県を選択」>「地域包括支援センター」>「市区町村」を選択

📅シリーズ全7回の内容

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