「まさか自分が…」多くの方がそう思うかもしれません。しかし、体は言葉を発する前に、静かなサインを送ってくれています。私の場合、そのサインは「血圧の変化」でした。11年前にすい臓がんのステージIVaで余命宣告を受けてから、私の毎日は自分自身の体と向き合うことの連続でした。そして、その経験から断言できることがあります。毎日の血圧測定は、あなたの命を守るための、最も手軽で確実な方法の一つである、と。
この記事では、がんサバイバーである私の実体験をもとに、なぜ日々の血圧測定が重要なのか、そして、テクノロジーを活用して、いかに無理なく、そして確実に健康管理を続けることができるのかをお伝えします。
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なぜ毎日の血圧測定が命を守るのか
実体験:血圧上昇が教えてくれた体調変化の予兆
私が血圧測定を毎朝の習慣にしたのは、11年前にすい臓がんの化学療法を始めたことがきっかけです。当初は、治療の影響を把握するためのものでした。しかし、長年続けていくうちに、血圧が単なる数字ではなく、体からの重要なメッセージであることに気づかされたのです。
- 腸閉塞の前兆を10-15mmHgの上昇で察知
- 発熱の数日前から現れる血圧変化
- がんサバイバーが実感した早期発見の重要性
がんの手術を経験した方は、腸閉塞のリスクと隣り合わせの生活を送ることがあります。私も体調不良や手術の影響で、何度か腸閉塞気味になりました。その時、決まって現れるのが血圧の上昇です。普段は上が117mmHg前後で安定している私の血圧が、明らかに10〜15mmHgほど高くなるのです。お腹の不調を感じる前にこの変化に気づけることで、食事を調整したり、薬を飲んだり、早めに医師に相談したりと、重症化を防ぐための行動を先手で打つことができました。
新型コロナウイルスや帯状疱疹に罹患した際も、同様の経験をしました。喉の痛みや発疹といった自覚症状や熱が出る数日前から、血圧がじわじわと上昇し始めたのです。これもまた、普段より10mmHg以上高い数値でした。「何かおかしい」と体を休ませる準備ができたのは、この血圧のデータがあったからです。
がんという大きな病気を経験し余命宣告を受けたからこそ、どんな小さな変化も見逃さないこと、そして「早期発見」がいかに重要かを痛感しています。血圧は、そのための最も信頼できるバロメーターの一つです。自分の「平常値」を知っていれば、わずかな異常にもすぐに気づくことができます。
手書き記録から自動記録へ – 11年続けられた理由
毎日のことだからこそ、手間は最小限にしたいものです。私も最初の頃は、手書きで血圧手帳に記録していました。しかし、忙しい朝にはそれが負担になることも。また、体調が優れない日には、その作業自体が大きな負担となり、継続することの難しさを痛感しました。
転機となったのは、オムロンの上腕式血圧計「HCR-7501T」との出会いです。測定すれば、Bluetooth経由で自動的にスマートフォンのアプリにデータが転送される。この「手間ゼロ」の仕組みが、11年間という長い期間、私が測定を続けられた最大の理由です。
家族も安心する「見える化」された健康状態
自動で記録されたデータは、Appleのヘルスケアアプリで一元管理しています。これにより、私自身の健康状態が「見える化」されるだけでなく、家族も私の状態を簡単に確認できるようになりました。
もし、離れて暮らす家族が有る方にとっては、日々の血圧データが安定していることを見るだけでも、大きな安心につながるはずです。
オムロン×Apple Watch 最強の組み合わせ
私が実践している「見守り健康管理」の核となるのが、オムロンの健康医療機器でのiPhoneとApple Watchの連携です。
実際に使っているおすすめ機器
- 血圧計:HCR-7501T
- 体温計:MC-6800B
- OMRON connect(オムロン コネクト)
- 初期投資と得られる安心感の価値
とにかく簡単で正確。腕に巻いてボタンを押すだけ。測定データは自動でアプリに転送されるので、記録の手間は一切ありません。
血圧と同じく、毎朝の体温測定も欠かせません。この体温計も測定結果を自動転送してくれます。血圧と体温のデータを並べて見ることで、より深く体調を理解できます。
これら全ての機器を繋ぐ要となる無料アプリです。測定データを記録・管理し、Appleのヘルスケアアプリへと橋渡しをしてくれます。
これらの機器を揃えるには、ある程度の初期投資が必要です。しかし、手書きの手間から解放され、病気の兆候を早期に発見できる可能性、そして何より自分と家族が得られる日々の安心感を考えれば、その価値は計り知れないと私は考えています。
主にスマートフォンアプリでデータ管理を行い、本体機能はシンプルでよいという方向けにコストパフォーマンスに優れた「HCR-7204T(1人用)」も発売されています
2人まで利用可のバックライト付きの「HCR-7624T」。コストパフォーマンスを重視「HCR-7524T」も発売されています
5分で完了!初期設定ガイド
- OMRON connectのダウンロードと設定</li>
App Storeから「OMRON connect」アプリをダウンロードし、画面の指示に従ってアカウントを作成します。 - 血圧計・体温計のペアリング
- ヘルスケアアプリとの連携設定
- つまずきやすいポイントと解決法
アプリの指示に従い、各機器をスマートフォンとBluetoothでペアリングします。ボタンを長押しするだけの簡単な操作です。
[Image of OMRON connectアプリのペアリング画面]
「OMRON connect」アプリの設定メニューから「連携アプリ・サービス」を選び、「ヘルスケア」をタップ。血圧や体温など、共有を許可したい項目をすべてオンにします。
– ペアリングがうまくいかない: スマートフォンのBluetoothがオンになっているか確認しましょう。一度オフにしてから再度オンにするとうまくいくことがあります。
– データが転送されない: 測定後、OMRON connectアプリを一度開いてみてください。アプリが起動するとデータが同期されます。
毎朝5分の健康習慣の作り方
測定を習慣化する3つのコツ
- 起床後すぐの「ながら測定」
- Apple Watchのリマインダー活用
- 測定場所を固定する効果
私の場合は、朝起きてトイレに行った後、ベッドに寝て心を落ち着かせている間に体温を測定し、パジャマから着替える時に体組計で計測します。
毎朝6時とか決まった時間にApple Watchの「血圧測定の時間です」という通知を設定。万が一忘れても、Apple Watchが優しく教えてくれます。
私の場合は体温計はベッドの横に置いておいて起きる前に、毎晩寝る前に起きて愛猫に飲ませる薬と血圧計を置いておいて、起きて直ぐ愛猫に薬を飲ませその後に計測します、このように血圧計と体温計は、決まった場所に置いておきましょう。「探す」という手間をなくすこと、毎日の決まった行動とセットにすること、これが継続の秘訣です。
体調日記としての活用法
OMRON connectアプリにはメモ機能があります。「少しお腹が張る」「風邪気味」など、その日の体調を簡単に入力しておくと、後からデータを見返した時に「この症状の時は血圧がこう変化するのか」という自分だけのパターンを発見できます。これは、まさに自分だけの「体調日記」です。
データが教えてくれること
平常時の数値を知ることの重要性
健康管理の第一歩は、自分の「平常値」を知ることから始まります。
- 個人の基準値の見つけ方
- 要注意な変化のパターン
まずは1〜2週間、毎日同じ時間・条件で測定を続けてみてください。その平均値が、あなたの「基準値」となります。私の場合、すい臓がんの手術前は血圧が高かったのですが、術後の基準は上が117mmHg、下が59mmHgです。この数値が私の健康のベースラインです。
一時的なストレスや睡眠不足で血圧が多少変動することは誰にでもあります。しかし、平常値から10〜15mmHg高い状態が数日続く場合は、体が何らかのサインを送っている可能性があります。
実例:術前術後で変わった血圧値
私自身の経験でも、がんの手術という大きな体の変化を経て(体重が23kgの大幅な体重減少により、BMIが肥満から普通体重に改善された?)、血圧の基準値は大きく変わりました。このように、ライフステージや治療によって基準値は変化します。定期的に自分の「今」の基準値を見直すことが大切です。
体温と血圧の相関を見る
ヘルスケアアプリを使えば、血圧と体温のグラフを並べて見ることができます。感染症の初期など、体温が上がり始める前に血圧が先に上昇するケースもあります。この二つのデータを組み合わせることで、より早く、より正確に体調の変化を捉えることができます。
体調変化を見逃さないデータ活用術
異変に気づくための見方
- 10mmHg以上の変化は要注意
- 1週間の変動パターンを確認
- 医師に見せるべきタイミング
私の経験上、これが最も重要な指標です。平常時から10mmHg以上高い状態が続く場合は、たとえ自覚症状がなくても、いつも以上に体調に気を配りましょう。
ヘルスケアアプリで週単位のグラフを見てみましょう。週末に高くなる、特定の曜日に低いなど、生活リズムと血圧の関連が見えてくるかもしれません。
持続的な血圧上昇に加え、めまい、頭痛、むくみなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。その際、記録したデータを見せれば、医師はより正確な診断を下すことができます。
家族との共有で安心倍増
- 遠方の家族も確認できる設定
- 異常値の通知設定
Appleのヘルスケアアプリには、データを家族と共有する機能があります。設定しておけば、遠方に住む子どもや親が、あなたの健康状態をさりげなく見守ることができます。
共有機能では、血圧が設定した数値を超えた場合に通知を送ることも可能です。万が一の時にも、すぐに対応できる安心感があります。
慢性疾患と向き合う方へ
がん・心疾患・糖尿病の方の活用法
私が実践している方法は、がんサバイバーだけでなく、心疾患や糖尿病などの慢性疾患と共に生活している方々にも、大いに役立つはずです。
- 治療中の体調管理に役立つ記録
- 副作用の早期発見
- 主治医との連携強化
- QOL(生活の質)向上につながるデータ活用
日々のバイタルデータを記録することは、治療の効果や副作用を客観的に把握する上で非常に重要です。
薬の変更があった時など、血圧や体温の変化を注意深く見ることで、副作用の兆候を早期に発見できる可能性があります。
客観的なデータを持って診察に臨むことで、医師とのコミュニケーションがより円滑になり、治療方針の決定にも役立ちます。データは、あなたと主治医をつなぐ共通言語となるのです。
体調を安定して管理できることは、日々の不安を軽減し、QOLの向上に直結します。
長期継続のモチベーション維持
- 小さな改善を見つける楽しみ
- 家族の安心が最大のご褒美
- 仲間と共有する健康管理
生活習慣を少し変えたことで血圧が安定するなど、データの中に「小さな改善」を見つけることが、続ける楽しみになります。
「データを見て安心したよ」という家族からの言葉が、何よりのモチベーションになることもあります。
同じように健康管理に取り組む友人と、アプリや活用法について情報交換するのも良いでしょう。
まとめ:今日から始める理由
ここまで読んでくださったあなたは、きっと健康への意識が高い方でしょう。しかし、大切なのは「知っていること」ではなく「始めること」です。
- 手遅れになる前に始める価値
- 最初の1週間で実感できる変化
- 3ヶ月後の安心感
体からのサインは、待ってくれません。何かあってから後悔するのではなく、何も起きていない「今」だからこそ始める価値があります。
まずは1週間。自分の体のリズムが「見える化」されるだけでも、意識は大きく変わるはずです。
3ヶ月も経てば、血圧測定は歯磨きのような当たり前の習慣になっているでしょう。その頃には、データに基づいた揺るぎない安心感を手に入れているはずです。
「もっと早く始めればよかった」
これは、病気を経験した多くの人が口にする言葉です。この記事が、あなたがそう後悔することなく、今日から未来の自分のための第一歩を踏み出すきっかけとなれば、これに勝る喜びはありません。毎朝5分の小さな習慣が、あなたの、そしてあなたの大切な人の未来を守ります。