図解でわかる!2025年厚生年金積立金から基礎年金への底上げ措置の全容、高齢者だけが年金ダウン

目次

図解でわかる!厚生年金から基礎年金への底上げ措置の全容

公開日: 2025年5月28日

はじめに:私たちの年金、どう変わる?「基礎年金底上げ措置」とは

本記事は、年金制度に関心のあるすべての方へ、特に将来の受給額や現行制度への影響を具体的に知りたい方に向けて、厚生年金積立金を活用した基礎年金の底上げ措置について、図解を交えながらわかりやすく解説することを目的としています。

少子高齢化が進む日本では、将来の年金給付水準に対する不安の声が高まっています。現行制度のままでは、特に国民年金(基礎年金)の給付水準が大幅に低下する可能性が指摘されています。

この課題に対応するための一つの策として、政府・与野党間で議論され、2025年の年金制度改革法案の修正案に盛り込まれたのが「基礎年金の底上げ措置」です。この措置は、相対的に財政状況が安定している厚生年金の積立金の一部を活用して、基礎年金の給付水準の低下を抑制しようとするものです。

しかし、この措置が具体的にどのようなもので、私たちの生活にどのような影響を与えるのか、多くの方が疑問や関心をお持ちでしょう。

この記事では、まず「基礎年金の底上げ」がなぜ今必要なのか、その背景と目的を解説します。

次に、この措置によって誰が、いつから、どの程度のメリット・デメリットを受ける可能性があるのか、年齢別の影響シミュレーションを具体的なデータや図解を交えて詳しく見ていきます。

また、既に年金を受給している方や、これから受給開始を迎える方への影響と、検討されている影響緩和措置についても触れます。

さらに、制度が実際に動き出すまでのスケジュールや、財源確保といった残された課題についても深掘りします。最後に、これからの私たちの年金について、未来のために知っておくべきことをまとめます。

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なぜ今「基礎年金の底上げ」が必要なのか?制度の背景と目的

日本の公的年金制度は、主に20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」の2階建て構造になっています。このうち、1階部分にあたる基礎年金が、将来的に給付水準を維持することが難しくなってきているという課題があります。


図1:日本の公的年金制度の基本構造

基礎年金が抱える課題

最大の課題は、少子高齢化の急速な進展です。年金制度は、現役世代が納める保険料で高齢者世代の年金給付を支える「賦課方式」を基本としています。しかし、少子化によって保険料を納める現役世代が減少し、高齢化によって年金を受け取る人が増え続けると、このバランスが崩れてしまいます。

その結果、現役世代一人ひとりの負担が増加するか、あるいは高齢者が受け取る年金の給付水準を引き下げざるを得なくなります。

実際に、日本経済新聞の記事(2025年5月14日)によれば、「今の制度では、年金額の伸びを抑える『マクロ経済スライド』と呼ばれる措置を基礎年金と厚生年金でそれぞれとっている。

経済状況が横ばいなら基礎年金は2057年度まで抑制を続ける必要があり、給付水準は今より3割下がる」と試算されています。これは、特に自営業者や非正規雇用者など、基礎年金が老後生活の大きな柱となる人々にとって深刻な問題です。

厚生年金積立金活用のアイデア

こうした基礎年金の財政的な厳しさに対し、比較的財政基盤が安定しているとされる厚生年金の積立金を活用して、基礎年金の給付水準を底上げしようという案が浮上しました。

野村総合研究所の木内登英氏のレポート「年金制度改革で基礎年金の底上げが将来実現する可能性」(2025年5月27日)では、この措置を「財政環境が相対的に安定している厚生年金の積立金を活用して、財政環境がより厳しい基礎年金の給付水準を底上げする施策だ」と説明しています。

底上げ措置の具体的な仕組み(マクロ経済スライド調整)

年金額の伸びを実質的に抑制する仕組みとして「マクロ経済スライド」があります。これは、賃金や物価の変動による改定率から、現役の被保険者の減少率や平均余命の伸び率に応じて設定される「スライド調整率」を差し引くことで、年金の給付水準を自動的に調整するものです。

今回の「基礎年金底上げ措置」が実施された場合、厚生年金の積立金の一部と追加の国庫負担を投入することで、基礎年金のマクロ経済スライドによる抑制措置の終了時期を早めることが目指されています。

前述の日本経済新聞の記事によると、現行制度では基礎年金の抑制終了が2057年度と見込まれるのに対し、底上げ措置によってこれが2036年度に前倒しされ、給付水準の低下幅も「3割減」から「1割減」に抑えられるとされています。

その一方で、この財源を拠出する厚生年金側は、マクロ経済スライドの抑制終了が現行の2026年度から2036年度に延び、給付水準が1割下がる可能性があると指摘されています。


図2:基礎年金底上げ措置によるマクロ経済スライド調整期間の変化(イメージ)
(注:上記は日本経済新聞(2025年5月14日)の情報を基にしたイメージであり、実際の制度変更とは異なる場合があります。)

このように、基礎年金の将来的な給付水準低下という大きな課題に対応するために、厚生年金積立金の活用という新たな手法が検討されているのです。しかし、この措置は全ての世代に同じ影響を与えるわけではなく、その効果と負担には世代間の違いが生じる可能性があります。

【核心解説①】誰がいつから得をする?損をする?年齢・ケース別影響シミュレーション

このセクションでは、今回の基礎年金底上げ措置が、具体的にどの年齢層に、どのような影響を与えるのか、厚生労働省の試算などを基に詳しく見ていきます。ただし、これらの試算は一定の前提条件(経済成長率など)に基づいたモデルケースであり、個々人の加入状況や将来の経済状況によって変動しうる点にご留意ください。

影響の全体像

朝日新聞の記事(2025年5月掲載)によると、この底上げ措置によって、将来的には厚生年金の受給者を含む99.9%の人の年金受給額が増えるとされています。しかし、その一方で、一部の年齢層では生涯受け取る年金総額が減少する可能性も指摘されています。

メリットを受ける年齢層と金額の目安

若年層・現役世代

一般的に、若い世代ほど生涯に受け取る年金総額が増加する傾向にあります。福岡資麿厚生労働大臣(当時)は、「実質ゼロ成長を見込んだケースでは、男性で現在62歳以下、女性で66歳以下の方は年金受給総額が増加する見込み」と述べています(朝日新聞 2025年5月掲載記事より)。これは、基礎年金の底上げ効果が長期にわたって続くためと考えられます。

就職氷河期世代への影響(特に注目)

特に注目されるのが、1990年代から2000年代初頭の就職難の時代に社会に出た「就職氷河期世代」(現在40代後半~50代前半)への影響です。

この世代は、非正規雇用が多かったり、厚生年金への加入期間が短かったりするケースがあり、将来の年金額が少なくなる懸念がありました。
imasaranewsの記事(2025年5月28日)Yahoo!ニュースの記事(テレビ朝日系、2025年5月27日配信)によると、厚労省のモデルケースでは、就職氷河期世代にあたる50歳の男性が65歳から年金を受け取り始めた場合、生涯で170万円~200万円ほど多くもらえるという試算が出ています。

これは、基礎年金の底上げが、この世代の年金不安を和らげる一定の効果を持つことを示唆しています。

デメリットを受ける可能性がある年齢層と金額の目安

現在の高齢者の一部

一方で、現在年金を受給中の高齢者の一部では、生涯に受け取る年金総額が減少する可能性があります。厚生労働省の資料によると、年金の受給総額で見た場合、男性では現時点で63歳以上、女性では67歳以上の人が最大で23万円程度、生涯受給額が減る計算になるとされています(テレビ朝日ニュース 2025年5月27日配信)。

これは主に、基礎年金を底上げするための財源として厚生年金の積立金が使われ、その結果として厚生年金側のマクロ経済スライドによる調整期間が従来より長くなる影響などが考えられます。

損益分岐点の存在

このメリットとデメリットの境目となる「損益分岐点」について、日本経済新聞の記事(2025年5月28日配信)は、厚生労働省の試算に基づき、男性で(2025年度時点で)63歳、女性で67歳が平均的な損益分岐点となると報じています。

つまり、これより若い世代は生涯受給総額が増加し、これより上の世代は減少する傾向があるということです。

図3:基礎年金底上げ措置による年齢・性別ごとの生涯受給総額変化(モデルケース・イメージ)
(注:上記は報道されている厚労省試算を基にしたイメージであり、個々の状況により異なります。具体的な金額は仮定であり、傾向を示すものです。)

影響額試算の前提条件

【注意】上記の金額や年齢は、あくまで特定の経済前提(例:実質ゼロ成長)のもとでのモデルケースに基づいた試算です。実際の受給額は、将来の経済動向、物価や賃金の変動、個々人の年金加入期間や納付状況、受給開始年齢など、様々な要因によって大きく変わる可能性があります。これらの数字は目安として捉え、ご自身の状況については専門機関にご確認ください。

【重要】法案の付則と実施判断の時期

最も重要な点の一つは、この基礎年金底上げ措置が直ちに実施されるわけではないということです。日本経済新聞の記事(2025年5月28日配信)によると、自民・公明・立憲民主の3党が合意した年金制度改革法案の修正案では、この底上げ措置は法案の付則に盛り込まれ、実際に措置を実施するかどうかは、2029年に行われる次回の年金財政検証の結果、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に判断されるという「条件付き」の内容になっています。

図4:基礎年金底上げ措置の実施判断までのタイムライン(イメージ)

したがって、今回の法案成立が即座に底上げを意味するのではなく、数年後の財政状況を見極めた上での判断となることを理解しておく必要があります。

【核心解説②】既に年金を受給している方への影響と緩和措置

基礎年金の底上げ措置は、将来の年金受給者だけでなく、既に年金を受給している方々や、これから受給開始を迎える高齢者層にとっても大きな関心事です。特に、前述のように一部の高齢者層で生涯受給額が減少する可能性が示されているため、その影響と対策について詳しく見ていきましょう。

現受給者への直接的な影響

前セクションで触れた通り、厚生労働省の試算では、2025年度時点において男性で63歳以上、女性で67歳以上の方々について、生涯で受け取る年金総額が減少する可能性があるとされています(テレビ朝日ニュース 2025年5月27日配信)。

この背景には、基礎年金の底上げ財源として厚生年金の積立金が活用されることに伴い、厚生年金自体のマクロ経済スライドによる給付調整期間が、現行制度で見込まれていたよりも長くなることが影響しています。

つまり、基礎年金部分は増えるものの、厚生年金部分の伸びが抑制されることで、トータルとしてマイナスになるケースが出てくる、という構造です。

特に、既に厚生年金を受給している方や、これから受給を開始するが基礎年金の受給期間が相対的に短い高齢層にとっては、基礎年金底上げの恩恵よりも厚生年金の調整延長による影響の方が大きくなる可能性があります。

影響緩和措置の検討状況

こうした現受給者や高齢層への影響を考慮し、年金制度改革法案の修正案には、影響を和らげるための規定が盛り込まれています。読売新聞の記事(2025年5月27日配信)によると、修正案の付則には、「厚生年金の受給額が一時的に低下する人が出る。この影響を緩和するための措置を国が実施する」と定められています。

また、Yahoo!ニュース(テレビ朝日系、2025年5月27日配信)も、修正案では一時的に厚生年金の受給額が低下する人について「影響を緩和するための措置を講ずる」と規定していると報じています。

ただし、この「影響緩和措置」の具体的な内容、例えばどのような人が対象となり、どのような方法で、どの程度の緩和が行われるのかについては、現時点では明確にされておらず、今後の政府の検討課題とされています。今後の議論の進展や発表を注視する必要があります。

受給者・待期者が注意すべきポイント

既に年金を受給している方や、間もなく受給開始年齢を迎える方は、以下の点に注意が必要です。

  • 正確な情報収集:年金制度に関する情報は複雑であり、報道によって内容が異なる場合もあります。厚生労働省や日本年金機構の公式発表、信頼できる専門家の解説などを確認し、正確な情報を得るよう努めましょう。
  • 自身の状況確認:ご自身の年金加入記録(ねんきん定期便、ねんきんネットなど)を確認し、加入期間やこれまでの納付額を把握しておくことが重要です。
  • 相談窓口の活用:不明な点や不安なことがある場合は、お近くの年金事務所や「ねんきんダイヤル」などの公的な相談窓口に問い合わせることを検討しましょう。
  • 今後の動向注視:前述の通り、底上げ措置の実施自体が2029年の財政検証後の判断であり、影響緩和措置の具体的内容も未定です。今後数年間の制度改正の動向や政府からのアナウンスに注意を払い続ける必要があります。

現時点では不確定な要素が多いものの、国が影響緩和措置を検討するとしている点は、一定の安心材料と言えるかもしれません。しかし、その実効性については、具体的な内容が明らかになるまでは判断が難しい状況です。

いつからどうなる?制度実現に向けたスケジュールと残された課題

基礎年金の底上げ措置は、年金制度改革法案の修正案に盛り込まれましたが、実際に制度として動き出すまでにはいくつかのステップと、乗り越えるべき課題が存在します。

制度実施までのステップとタイムライン

主な流れは以下のようになると考えられます。

  1. 2025年:年金制度改革法案の審議・成立

    自民・公明・立憲民主の3党が合意した修正案が国会で審議され、今国会(2025年5月現在)中に成立する公算が大きいと報じられています(日本経済新聞 2025年5月28日配信)。

  2. 2029年:次期年金財政検証の実施

    これが最大の関門となります。年金財政検証は、おおむね5年ごとに行われ、将来の年金財政の健全性や給付水準の見通しなどが検証されます。2029年の財政検証の結果、基礎年金の給付水準が大幅に低下すると見込まれる場合に、今回法案の付則に盛り込まれた底上げ措置の具体的な実施有無、内容、時期が判断されることになります(imasaranews 2025年5月28日記事)。

  3. 実施判断後の準備・施行

    2029年の財政検証で実施が決定された場合、具体的な制度設計やシステム改修、周知期間などを経て、実際に底上げ措置が施行されることになります。施行時期は現時点では未定です。

つまり、法案が成立してもすぐに年金額が変わるわけではなく、数年後の財政状況と政治判断に委ねられるという点を理解しておく必要があります。

最大の課題:巨額の財源確保

基礎年金の底上げを実現するためには、莫大な財源が必要です。専門家の試算によると、底上げ措置に伴い、厚生年金積立金の活用とは別に、追加で約70兆円規模の国庫負担(税金)が必要になるとも言われています(島澤諭氏 Yahoo!ニュース エキスパート記事 2025年5月28日)。


図5:基礎年金底上げの財源構成(イメージ)

この追加国庫負担をどのように確保するのか、具体的な議論は今回の法案修正合意では先送りされています。消費税の更なる引き上げ、所得税・法人税の見直し、あるいは他の歳出削減など、国民負担に直結する可能性のある議論であり、今後の大きな焦点となります。財源問題が解決されなければ、底上げ措置は「絵に描いた餅」になりかねません。

制度の問題点と批判

厚生年金加入者からの不公平感

厚生年金の積立金は、本来、厚生年金加入者(主に会社員や公務員)が将来受け取る年金給付のために積み立てられたものです。この積立金を基礎年金の底上げに活用することについて、「厚生年金保険料を支払ってきたサラリーマンのお金を、国民年金に加入する自営業者などに回す」という不公平感を指摘する声が強くあります。

実際に、自民党の河野太郎氏は自身のX(旧Twitter)で、厚生年金積立金を基礎年金に回せば同額の税金投入が必要になるとし、「これを『あんこ』というならば『毒入りのあんこ』だ」と批判的な見解を示しています(Yahoo!ニュース テレビ朝日系 2025年5月27日配信記事より)。

過去にも同様の案は複数回提案されてきましたが、厚生年金加入者からの強い反発によって実現に至らなかった経緯があります。今回の提案も、こうした歴史的な経緯を踏まえると、実施段階で大きな反対に直面する可能性があります。

保険料と税金の混同問題

専門家からは、この底上げ措置が保険料と税金を混同する「手抜きな議論」であるという批判も出ています。保険料は保険原理に基づいて支払われ、将来的に自身が受け取るべきサービスの対価として徴収されるものであり、必ずしも所得再分配を目的としない税金とは性質が異なります。

この措置によって、厚生年金の保険料が実質的に税金的な使われ方をすることになり、年金制度の根本的な設計思想を揺るがすという指摘もあります。制度の透明性と信頼性を損なう懸念が払拭されていません。

徴収システムの根本的課題

日本の社会保険料徴収システムには構造的な問題があるとの指摘もあります。税金(国税庁)と社会保険料(日本年金機構)の徴収組織が分かれているため、保険料の徴収漏れが多いという現状があります。これは、基礎年金の財政難の一因とも言えます。

諸外国では税金と社会保険料の徴収を一本化する「社会歳入庁」のような組織を設置している例が多いのに対し、日本の分断された徴収体制は国際的に見ても珍しく、非効率であると指摘されています。

根本的解決策の方向性

根本的な解決策としては、徴収組織の一本化(社会歳入庁の設立)が提案されていますが、財務省が国税庁の権限を手放したくないという省庁間の縄張り争いもあり、実現が難しい状況が続いています。

こうした根本的な制度改革を行わないまま、厚生年金の積立金を活用するという対症療法的な手法を用いることで、制度の持続可能性と信頼性がさらに低下するリスクも懸念されています。

各政党・専門家の意見(簡潔に)

今回の基礎年金底上げ策を盛り込んだ法案修正は、与党である自民党・公明党と、野党第一党である立憲民主党の3党首会談で正式合意されました。これにより、法案は今国会で成立する見通しとなりました。(産経新聞 2025年5月28日社説(リンク切れの可能性あり)

専門家からは、将来の年金水準低下に歯止めをかける試みとして一定の評価をする声がある一方で、財源論の先送りや、厚生年金への影響、制度の複雑化に対する懸念も示されています。例えば、タレントの谷原章介氏は「分からないことだらけ」とコメントし、制度の難解さを指摘しています(Yahoo!ニュース めざましmedia 2025年5月26日配信)。

このように、制度実現には多くのステップと課題が残されており、今後の動向を注意深く見守る必要があります。

まとめ:私たちの年金、未来のために知っておくべきこと

今回の「厚生年金積立金を活用した基礎年金の底上げ措置」は、日本の年金制度が直面する大きな課題に対応するための一つの提案です。しかし、その影響は多岐にわたり、メリットとデメリット、そして多くの不確定要素が存在します。

本記事の要点整理

  • 目的と仕組み:少子高齢化による基礎年金の将来的な給付水準低下に対応するため、厚生年金積立金の一部と追加の国庫負担を活用し、基礎年金のマクロ経済スライド調整期間を短縮して給付水準の目減りを抑制することを目指す。
  • 年齢層による影響の違い:
    • メリット:主に現役世代、特に若年層や就職氷河期世代で生涯受給総額が増加する見込み。厚労省試算では男性62歳以下、女性66歳以下でプラス。
    • デメリットの可能性:主に現在の高齢者の一部(男性63歳以上、女性67歳以上など)で、厚生年金の調整期間延長により生涯受給総額が減少する可能性。
  • 既受給者への影響と緩和措置:一部の高齢受給者で生涯受給総額が減少する可能性があるため、国による影響緩和措置が検討されるが、具体策は未定。
  • 実現への道筋:措置の実施は2029年の財政検証の結果を踏まえて判断される「条件付き」。最大の課題は、約70兆円ともされる追加の国庫負担の財源確保であり、この議論は先送りされている。
  • 制度への批判:厚生年金加入者の保険料を基礎年金に回すことへの不公平感や、保険料と税金を混同する制度設計への批判、徴収システムの根本的問題が解決されていないことなど、多くの課題が指摘されている。


(再掲)図2:基礎年金底上げ措置によるマクロ経済スライド調整期間の変化(イメージ)



(再掲)図3:基礎年金底上げ措置による年齢・性別ごとの生涯受給総額変化(モデルケース・イメージ)

読者へのメッセージ

年金制度は私たちの老後の生活を支える重要な社会インフラですが、その内容は複雑で、改正も頻繁に行われます。提案されている改革案には賛否両論があり、制度の公平性や持続可能性に関する議論は今後も続くでしょう。一方的な見方ではなく、多角的な視点から理解を深めることが重要です。

  • 継続的な情報収集:政府や公的機関からの発表、信頼できるメディアの報道などを通じて、常に最新の情報を得るように心がけましょう。
  • 自身の状況確認と相談:「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でご自身の加入状況を確認するとともに、不明な点があれば年金事務所や専門家に相談することを推奨します。
  • 建設的な議論への参加:年金制度は社会全体で支えるものです。正しい情報に基づいて、制度のあり方について考え、建設的な議論に参加していく姿勢が、より良い未来の年金制度を築く上で重要となります。

今回の底上げ措置には、将来世代の年金不安を軽減する側面がある一方で、制度設計上の問題点や不公平感も指摘されています。年金制度の複雑な課題に対しては、短期的な対応策と並行して、徴収システムの一本化など根本的な解決策も検討される必要があるでしょう。私たち一人ひとりが年金制度について理解を深め、将来に向けた議論に参加していくことが求められています。

情報収集のためのリンク集(参考)

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