第7回:知っておきたい役立つ情報 – 突然の介護に備えるチェックリスト

「突然の介護に備える!今から知っておきたい公的介護サービス一覧」シリーズも、いよいよ最終回となりました。これまでの6回で、介護保険制度の基本から各種サービスの詳細、申請方法まで幅広く解説してきました。

第7回となる今回は、実際に介護が必要になった時に役立つ実践的な情報をまとめてお伝えします。緊急時の対応方法から、家族での情報共有、仕事との両立、そして意外と知られていない自治体独自のサービスまで、「知っておいて良かった」と思える内容を厳選しました。

【前回の振り返り】
第6回では、介護サービスを利用するための具体的な手続きについて学びました。要介護認定の申請から認定調査、ケアプランの作成、そしてサービス利用開始までの一連の流れを確認しました。今回は、その知識を踏まえて、より実践的な備えについて考えていきます。

【この回で学べること】

  • 介護が必要になった時の初動チェックリスト
  • 家族間での情報共有の具体的な方法
  • 介護と仕事を両立するための支援制度
  • 自治体独自の高齢者支援サービスの活用法
📺 動画でも解説しています
この記事の内容は動画でもわかりやすく説明しています。視覚的に理解したい方はぜひご覧ください。
▶️ 動画を見る

1. 緊急時の初動チェックリスト – いざという時のために

突然の介護に直面した時の対応手順

介護は多くの場合、突然やってきます。転倒による骨折、脳梗塞での入院、認知症の症状の顕在化など、「まさか」と思う出来事がきっかけとなることがほとんどです。そんな時、慌てずに適切な対応をするために、以下のチェックリストを参考にしてください。

【緊急時の連絡先リスト】

すぐに連絡すべき相手と優先順位

  1. かかりつけ医・主治医
  2.  - 診療時間内:クリニックの電話番号
     - 診療時間外:夜間・休日診療の連絡先
     - 緊急時の対応指示を事前に確認しておく

  3. 地域包括支援センター
  4.  - 平日の連絡先と対応時間
     - 土日祝日の緊急連絡先
     - 担当地域の確認(住所によって管轄が異なる)

  5. ケアマネジャー(既に介護認定を受けている場合)
  6.  - 担当ケアマネジャーの携帯電話番号
     - 所属事業所の連絡先
     - 不在時の代理担当者情報

  7. 家族・親族の緊急連絡網
  8.  - キーパーソンとなる家族の優先順位
     - 遠方の家族への連絡方法
     - LINEグループなど一斉連絡の手段

【退院後の在宅介護準備チェックリスト】

入院から退院までの期間は意外と短く、準備期間は限られています。以下の項目を確認しながら、計画的に準備を進めましょう。

  • 医療面の準備
  •  - □ 退院時カンファレンスへの参加
     - □ 在宅での医療処置の習得(必要な場合)
     - □ 訪問診療・訪問看護の手配
     - □ 薬の管理方法の確認
     - □ 緊急時の対応マニュアルの作成

  • 生活環境の準備
  •  - □ 住宅改修の必要性確認(手すり、段差解消など)
     - □ 福祉用具のレンタル手配(ベッド、車椅子など)
     - □ 室内の動線確保と危険箇所の改善
     - □ 緊急通報システムの設置検討

  • 介護体制の準備
  •  - □ 要介護認定の申請(未申請の場合)
     - □ ケアマネジャーの選定
     - □ 必要な介護サービスの検討
     - □ 家族の役割分担の決定
     - □ 介護スケジュールの作成

かかりつけ医や薬の情報整理

介護が必要になると、医療情報の管理がとても重要になります。以下の情報を整理して、家族で共有できるようにしておきましょう。

  • お薬手帳の活用と情報管理
  •  - 現在服用中の薬の一覧表作成
     - 薬の効能と副作用の把握
     - 服薬時間と用量の記録
     - アレルギーや禁忌薬の明記
     - 調剤薬局の連絡先

  • 医療情報ファイルの作成
  •  - 既往歴と現病歴のまとめ
     - 検査結果のコピー保管
     - 医師からの説明メモ
     - 入院・手術記録
     - 保険証や医療証のコピー

2. 家族で情報共有しておくべき「3つのポイント」

ポイント1:本人の意向と価値観の共有

介護において最も大切なのは、本人の意思を尊重することです。元気なうちから、以下の点について話し合っておくことをお勧めします。

  • 事前に確認しておきたい本人の希望
  •  - どこで暮らしたいか(自宅、施設など)
     - 延命治療についての考え
     - 財産管理の方法
     - 大切にしている生活習慣や趣味
     - 人間関係で大切にしたいこと

  • エンディングノートの活用
  •  エンディングノートは、自分の希望や情報を整理して残すツールです。市販のものを活用したり、自治体が配布しているものを利用したりすることができます。記載内容は定期的に見直し、家族と共有することが大切です。

ポイント2:家族の役割分担と連携体制

介護は一人で抱え込むものではありません。家族全員で協力体制を作ることが、持続可能な介護の鍵となります。

  • 役割分担の考え方
  •  - 主介護者と副介護者の決定
     - 得意分野を活かした分担(医療面、生活面、経済面など)
     - 遠方の家族ができることの明確化
     - 定期的な交代制の検討

  • 家族会議の開き方
  •  1. 定期的な開催日の設定(月1回など)
     2. 議題の事前共有
     3. オンライン参加の活用(遠方の家族向け)
     4. 決定事項の記録と共有
     5. 次回までの課題設定

ポイント3:経済面の準備と管理

介護には予想以上の費用がかかります。家族で経済面の情報を共有し、計画的な資金管理を行いましょう。

  • 共有すべき経済情報
  •  - 本人の収入と資産状況
     - 年金額と受給状況
     - 預貯金の管理方法
     - 保険の加入状況
     - 毎月の固定費

  • 介護費用の見積もりと分担
  •  - 介護サービス利用料の概算
     - 医療費の見込み
     - 生活費の算出
     - 家族間での費用分担ルール
     - 成年後見制度の検討

3. 「介護休業制度」を仕事と介護の両立に役立てる方法

介護休業制度の基本を理解する

働きながら介護を行う人にとって、介護休業制度は重要な支援制度です。しかし、実際の利用率は低く、制度の内容が十分に理解されていないのが現状です。

  • 介護休業制度の概要
  •  - 対象家族1人につき、通算93日まで取得可能
     - 3回まで分割して取得できる
     - 雇用保険から介護休業給付金が支給される
     - 正社員だけでなく、条件を満たせばパート・契約社員も対象

  • 介護休業給付金の計算方法
  •  - 支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×67%
     - 賃金月額の上限:504,600円
     - 賃金月額の下限:79,710円

介護休業以外の両立支援制度

介護休業だけでなく、様々な制度を組み合わせることで、仕事と介護の両立が可能になります。

活用できる制度一覧

  1. 介護休暇
  2.  - 年5日(対象家族が2人以上の場合は10日)
     - 時間単位での取得が可能
     - 有給・無給は会社による

  3. 短時間勤務制度
  4.  - 利用開始から3年間で2回以上利用可能
     - 1日の所定労働時間を短縮
     - フレックスタイム制との併用も検討

  5. 時間外労働・深夜業の制限
  6.  - 月24時間、年150時間を超える時間外労働の免除
     - 深夜業(午後10時~午前5時)の免除

  7. 所定外労働の免除
  8.  - 残業の免除を請求できる
     - 介護終了まで何度でも請求可能

職場での相談とコミュニケーション

制度を活用するためには、職場の理解と協力が不可欠です。

  • 上司・人事部への相談ポイント
  •  - 介護の状況を具体的に説明
     - 必要な配慮や制度利用の希望を明確に伝える
     - 業務への影響と対策案を提示
     - 定期的な状況報告を約束

  • 同僚との関係維持
  •  - 感謝の気持ちを忘れずに伝える
     - 可能な範囲での業務協力
     - 介護の状況を適度に共有
     - 将来的な恩返しの意識

4. 意外と知らない!自治体独自の介護・高齢者支援サービス

介護保険外の生活支援サービス

介護保険でカバーされないサービスも、自治体独自の事業として提供されています。これらのサービスは、介護予防や生活の質の向上に大きく貢献します。

主な生活支援サービス例

  1. 配食サービス
  2.  - 栄養バランスの取れた食事を自宅に配達
     - 安否確認も兼ねている場合が多い
     - 利用料金は自治体により異なる(1食300~800円程度)
     - 週1回から毎日まで選択可能

  3. 見守りサービス
  4.  - 定期的な訪問による安否確認
     - 緊急通報システムの貸与
     - センサーによる見守りシステ

     - 地域ボランティアによる声かけ

  5. 移送サービス
  6.  - 病院への通院支援
     - 買い物への同行
     - 福祉タクシー券の配布
     - コミュニティバスの運行

  7. 家事援助サービス
  8.  - 掃除、洗濯、買い物代行
     - ゴミ出し支援
     - 簡単な修繕作業
     - 庭の手入れ

介護者向けの支援サービス

介護する家族の負担軽減も、自治体の重要な役割です。

介護者支援の具体例

  1. 介護者の集い・交流会
  2.  - 月1回程度の定期開催
     - 介護の悩み相談や情報交換
     - 専門職によるミニ講座
     - リフレッシュ企画(ヨガ、手芸など)

  3. 介護技術講習会
  4.  - 移乗・移動の介助方法
     - 食事・入浴介助のコツ
     - 認知症ケアの基本
     - 腰痛予防の体操

  5. レスパイトケア事業
  6.  - 介護者の休息確保を目的とした一時預かり
     - デイサービスの追加利用支援
     - ショートステイの優先利用
     - ボランティアによる見守り

住まいに関する支援

高齢者が安心して暮らせる住環境づくりも、自治体の支援対象です。

住宅関連の支援制度

  1. 住宅改修費の上乗せ助成
  2.  - 介護保険の20万円に追加して助成
     - 所得制限がある場合が多い
     - 工事内容の事前審査が必要

  3. 高齢者向け住宅の提供
  4.  - シルバーハウジング
     - 高齢者向け優良賃貸住宅
     - 家賃補助制度
     - 住み替え支援

  5. 空き家活用事業
  6.  - 高齢者向けシェアハウス
     - 地域の交流拠点
     - グループリビング

自治体サービスの調べ方と申請方法

これらのサービスは自治体によって内容が大きく異なります。以下の方法で情報を収集しましょう。

  • 情報収集の方法
  •  - 所得制限や年齢要件の確認
     - 必要書類の事前準備
     - 申請期限の確認
     - サービス開始までの期間把握

  • 申請時の注意点
  •  - 所得制限や年齢要件の確認
     - 必要書類の事前準備
     - 申請期限の確認
     - サービス開始までの期間把握

まとめ – 介護への備えは知識から始まる

今回のポイント振り返り

第7回では、介護に関する実践的な知識とツールをご紹介しました。

  1. 緊急時の備えとして、連絡先リストや退院準備のチェックリストを作成し、いざという時に慌てない準備をしておきましょう。
  2. 家族での情報共有は、本人の意向確認、役割分担、経済面の3つのポイントを押さえて、定期的に話し合う機会を持つことが大切です。
  3. 仕事と介護の両立には、介護休業制度をはじめとする様々な支援制度があります。遠慮せずに活用し、職場とも良好なコミュニケーションを保ちましょう。
  4. 自治体独自のサービスは、介護保険ではカバーできない部分を補完する重要な資源です。積極的に情報収集し、利用できるものは活用してください。

シリーズ全体を通じて

全7回にわたる「突然の介護に備える!今から知っておきたい公的介護サービス一覧」シリーズはいかがでしたか。

そして最終回では実践的ないざという時のための知識と備えについて解説してきました。

介護は誰にでも訪れる可能性がある、身近な課題です。「まだ大丈夫」と思っている時こそ、準備を始める最適なタイミングです。このシリーズで得た知識を、ぜひ実生活に活かしていただければ幸いです。

今後に向けて

介護の制度やサービスは常に変化しています。定期的に最新情報をチェックし、知識をアップデートすることも大切です。また、実際に介護が必要になった際は、一人で抱え込まず、専門職や支援機関を頼ることを忘れないでください。

最後に、このシリーズの内容を図解入りでPDFファイルをご用意しています(各回のブログ記事からダウンロードできます)。印刷して保管したり、家族と共有したりしてご活用ください。

介護への備えは、知識を得ることから始まります。この記事が、あなたとあなたの大切な人の安心につながることを願っています。

💡 ポイント
今回の図解入りの詳しい説明PDFおよびチェックリスト&情報整理シートのダウンロードは、こちらから
シリーズ第1回〜第4回の図解入りの詳しい説明PDFのダウンロードは、こちらから
シリーズ第5回〜第7回の図解入りの詳しい説明PDFのダウンロードは、こちらから
最新情報をチェックしよう!