第2回:2026年 年金改正、働きながらもらう年金が大きく変わる【実践編】

1. 在職老齢年金とは?まずは基本を理解しよう

前回、2026年の年金改正の全体像をお伝えしました。今回は、その中でも最も影響が大きい「在職老齢年金」について、詳しく解説していきます。

ラストには、今回の図解入りの詳しい説明PDFがダウンロードできるようになっています、ぜひご活用ください。

「働くと年金が減る」仕組みの正体

「在職老齢年金」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、実は多くの働くシニアに関係する重要な制度です。

簡単に言うと、60歳以降も厚生年金に加入して働いている方が、給与と年金の合計額が一定の基準を超えると、年金の一部が減らされる(支給停止される)仕組みのことです。

「せっかく働いているのに、年金が減らされるなんて…」と感じる方も多いでしょう。実際、この制度のために、多くのシニアが「働き控え」をしてきました。

なぜこの制度があるのか?

そもそも、なぜこのような制度が存在するのでしょうか。年金制度の基本的な考え方は、「高齢になって働けなくなった人の生活を支える」というものです。

そのため、「十分な給与収入がある人には、年金を減らしても問題ないだろう」という発想から、在職老齢年金の仕組みが作られました。

しかし時代は変わりました。人生100年時代、元気なシニアが増え、労働力不足も深刻です。「働く意欲のある人の足を引っ張る制度」として、見直しを求める声が高まっていたのです。

対象となるのはどんな人?

在職老齢年金の対象となるのは、以下の条件を満たす方です。

【対象者の条件】

  • 60歳以上で老齢厚生年金の受給権がある
  • 厚生年金に加入して働いている(正社員、契約社員、パートなど雇用形態は問わない)

【対象とならない働き方】

  • 自営業・フリーランス(厚生年金に加入していない)
  • 不動産収入や株式配当などの給与以外の収入
  • 厚生年金に加入していないパート・アルバイト

つまり、会社などに雇用されて厚生年金に加入している場合のみ、この制度の対象となります。

2. 2026年4月の大改正:62万円の新基準

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2-1. 計算の仕組みを図解で理解

在職老齢年金の計算は少し複雑ですが、基本的な仕組みを理解しておきましょう。

【改正前】2025年度までの基準

支給停止の判定基準:月50万円(2024年度価格)→ 月51万円(2025年度)

計算に使う2つの金額:

  • 基本月額:老齢厚生年金の月額(報酬比例部分)
  • 総報酬月額相当額:その月の給与 + 過去1年間の賞与÷12

計算式

(基本月額 + 総報酬月額相当額)が51万円を超える場合:
支給停止額 = (合計額 − 51万円)÷ 2

具体例:Aさんのケース(66歳男性)

  • 老齢厚生年金:月14万円
  • 給与:月40万円 + 賞与月換算10万円 = 合計50万円
  • 判定合計:14万円 + 50万円 = 64万円

51万円を13万円超過しているので:
支給停止額:13万円 ÷ 2 = 6.5万円
実際にもらえる年金:14万円 − 6.5万円 = 7.5万円
年間の損失:78万円

【改正後】2026年4月からの新基準

支給停止の判定基準:月62万円

Aさんのケースで比較すると、合計64万円は新基準62万円を2万円だけ超過:
支給停止額:2万円 ÷ 2 = 1万円
実際にもらえる年金:14万円 − 1万円 = 13万円
改正の効果:同じ働き方でも、年間で66万円も手取りが増えます!

2-2. あなたの年金、いくら増える?パターン別シミュレーション

【ケース1】標準的な再雇用者(66歳男性・Bさん)

給与35万円、賞与月換算15万円、年金14万円の場合:
改正前は月6.5万円カットされていましたが、改正後は月1万円のカットで済み、手取りが月5.5万円アップします。

【ケース2】パート勤務者(62歳女性・Cさん)

給与20万円、賞与月換算5万円、年金8万円の場合:
合計33万円なので、改正前(51万円基準)でも改正後でも年金は満額もらえます。今後給料が増えても安心です。

【ケース3】役員待遇の継続勤務者(68歳男性・Dさん)

給与55万円、賞与月換算15万円、年金18万円の場合:
改正前は年金が全額停止(0円)でしたが、改正後は月5万円の年金が復活します。


3. 就労意欲への影響:どう働き方を変えるべきか

3-1. もう「働き控え」は不要

これまで、多くのシニアが「年金を減らされたくない」という理由で、残業を断ったり昇給を辞退したりしてきました。

しかし、2026年4月以降は基準が62万円に上がることで、フルタイムで責任あるポジションに就いても年金が減りにくくなります。企業側も、シニアの能力を正当に評価して給与を支払いやすくなるメリットがあります。

3-2. 戦略的な働き方の選択肢

  • 選択肢1:厚生年金に加入してしっかり働く
    働きながら保険料を払うことで、将来もらえる年金額をさらに増やすことができます。
  • 選択肢2:厚生年金に加入しない働き方(フリーランス等)
    個人事業主ならどれだけ稼いでも在職老齢年金の対象外。年金は一切減りません。
  • 選択肢3:65歳を境に切り替える
    65歳までは会社員として年金を増やし、以降は業務委託で年金を満額もらうという戦略も有効です。

4. 注意すべきポイント

  • 基礎年金(国民年金)は減額の対象外:どれだけ働いても、基礎年金(月約6.8万円)は全額もらえます。
  • 65歳未満は異なる基準(28万円):2026年改正でも、60〜64歳の方の基準は28万円のまま据え置かれる予定です。
  • 配偶者の年金には影響しない:本人の年金が減らされても、配偶者自身の年金が減ることはありません。
  • 年金額は毎年見直される:働き続けると「在職定時改定」により、毎年少しずつ年金が増えていきます。

5. まとめ:在職老齢年金改正の3つのポイント

  1. 基準額が51万円から62万円へ引き上げられ、約20万人の年金が増える。
  2. 「働き控え」をせず、能力をフルに発揮して稼げる時代になる。
  3. 自分の収入と年金の合計を確認し、最適な働き方を戦略的に選ぶことが大切。

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シリーズ記事リンク

第1回
📝ブログ :
第1回:2026年、あなたの年金はこう変わる【基礎編】
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第2回
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第2回:2026年 年金改正、働きながらもらう年金が大きく変わる【実践編】
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https://www.youtube.com/watch?v=_3VpkDQLd88

第3回
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第3回:2026年 年金改正、繰下げ受給で年金を最大化する方法【応用編】
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次回予告:
次回(第3回)は、「繰下げ受給」を徹底解説します。何歳まで生きれば得をするのか、損益分岐点を詳しく分析します。お楽しみに!

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