はじめに:なぜ今、年金改正を知る必要があるのか
2026年4月、私たちの年金制度が大きく変わります。
「また制度が変わるの?」「難しそう…」と思われるかもしれません。でも、今回の改正は、特に60歳以降も働き続けるシニアの方にとって、知らないと損をする重要な内容が含まれています。
2025年6月に成立した「年金制度改正法」は、少子高齢化が進む日本で、誰もが安心して働き続けられる社会を目指すための大きな一歩です。特に注目すべきは、これまで「働くと年金が減らされる」と敬遠されてきた仕組みが大幅に緩和されること。意欲的に働き続けたいシニアにとって、まさに追い風となる改正なのです。
この連載で分かる3つのこと
本連載(全4回)では、2026年の年金改正について、次の3つを中心にお伝えします。
- 在職老齢年金の基準額引き上げ:働きながら受け取る年金が増える仕組み(第2回で詳しく解説)
- 繰下げ受給の賢い活用法:年金を何歳から受け取るのが得か(第3回で詳しく解説)
- 見落としがちな注意点と最適戦略:税金や個別事情への対応(第4回で詳しく解説)
まず今回は、改正の全体像をつかんでいただくことが目的です。専門用語はできるだけ使わず、「自分に関係あるのか」が分かるようにお伝えしていきます。
改正の全体像:3つの大きな変更点
2026年からの年金改正には、さまざまな内容が含まれていますが、特にシニアの皆さんに影響が大きいのは次の3つです。
働くシニアに朗報「在職老齢年金」の壁が上がる

在職老齢年金とは?
「在職老齢年金」という言葉、聞いたことはありますか?
これは、60歳以降も厚生年金に加入して働いている方が対象の制度です。給与と年金の合計額が一定の基準を超えると、年金の一部または全額が減らされる(支給停止される)仕組みのことです。
これまで多くの方が「せっかく働いても、年金が減らされるなら意味がない」と感じ、働く時間や給与を調整してきました。これが「働き控え」と呼ばれる現象です。
2026年4月から、基準額が大幅アップ
今回の改正で、この基準額が月50万円から月62万円へと、一気に12万円も引き上げられます。
【改正前(2024年度)】
給与と年金の合計が月50万円を超えると、超えた分の半分が年金から減額
【改正後(2026年4月〜)】
給与と年金の合計が月62万円を超えない限り、年金は減額されない
例えば、給与が月40万円、年金が月14万円の方の場合:
- 改正前:合計54万円なので、4万円オーバー → 年金が月2万円減額
- 改正後:合計54万円は62万円以下 → 年金は減額なし!

この変更により、約20万人の方が年金の全額を受け取れるようになると試算されています。
なぜ基準額を上げるのか?
日本は深刻な労働力不足に直面しています。元気なシニアの方々に「働き控え」をせず、意欲的に働いていただくことが、社会全体にとっても重要だからです。
詳しい計算方法や、具体的にいくら年金が増えるのかは、第2回で詳しく解説します。
長生き時代の味方「繰下げ受給」の選択肢

繰下げ受給とは?
年金は原則65歳から受け取れますが、受け取り開始を遅らせる(繰り下げる)ことができます。これを「繰下げ受給」といいます。
繰下げの最大のメリットは、1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%増えること。そして、この増額は一生涯続きます。
75歳まで繰り下げで84%増額
現在の制度では、最長で75歳まで繰り下げることができます。
- 70歳から受給開始:42%増額(0.7% × 60ヶ月)
- 75歳から受給開始:84%増額(0.7% × 120ヶ月)
例えば、本来65歳から月10万円もらえる年金を75歳まで繰り下げると、月18.4万円になります。月8.4万円、年間で100万円以上も多く受け取れる計算です。

「でも、いつまで生きられるか分からない…」
確かに、繰下げには「長生きしないと損」というリスクがあります。何歳まで生きれば得になるのか(損益分岐点)は、第3回で詳しく解説します。
2026年改正との関係
今回の在職老齢年金の基準額引き上げは、実は繰下げ受給の効果を高める側面があります。これまで「働くと年金が減らされるから繰り下げても意味がない」と思われていた方も、新制度では繰下げのメリットを最大限に活かせるようになります。
この点も、第3回で詳しく解説します。
その他の変更(簡潔に紹介)
2026年改正には、他にも以下のような変更が含まれています。ここでは概要のみお伝えします。
① 社会保険の加入対象拡大
パートやアルバイトなど、短時間で働く方の厚生年金・健康保険への加入が段階的に拡大されます。
主なポイント
- 企業規模の要件が段階的に撤廃(2027年〜)
- 「月8.8万円(年収約106万円)以上」という賃金要件も撤廃予定(2028年まで)
これにより、より多くの方が厚生年金に加入し、将来の年金額が増える可能性があります。
② 高収入の方は保険料がアップ
厚生年金の保険料計算の基礎となる「標準報酬月額」の上限が、65万円から段階的に75万円まで引き上げられます(2027年〜2029年)。
影響を受けるのは
- 月給が65万円を超える高収入の方
- 保険料は増えますが、将来の年金額も増えます
③ iDeCo(個人型確定拠出年金)の年齢引き上げ
個人で老後資金を準備できる「iDeCo」の加入可能年齢が、65歳未満から70歳未満に引き上げられます。
メリット
- 65歳以降も働く方が、掛金を所得控除で節税しながら老後資金を積み増せる
- 在職老齢年金の緩和とあわせて、高齢期の資産形成を後押し
④ 遺族年金の見直し(2028年施行)
配偶者を亡くした方が受け取る「遺族厚生年金」の制度が見直されます。
主な変更
- 男女の格差を是正
- 子のいない60歳未満の配偶者は、5年間の有期給付に(2028年4月〜)
すでに受給している方には影響しませんが、これから受給する可能性がある方は注意が必要です。
あなたに関係する改正は?簡単チェックリスト
ここまで読んで「結局、自分に関係あるの?」と思われた方も多いでしょう。
以下のチェックリストで、どの改正があなたに関係するか確認してみてください。
☑ 60歳以降も厚生年金に加入して働く予定がある
→ 第2回「在職老齢年金」が特に重要です!
給与と年金の合計が月50万円を超えている方、または超えそうな方は、改正で年金が増える可能性が高いです。
☑ 年金を何歳から受け取るか、まだ決めていない
→ 第3回「繰下げ受給」が特に重要です!
健康に自信がある方、65歳以降も収入がある方は、繰下げ受給を検討する価値があります。
☑ 月給が65万円以上ある(または予定がある)
→ 第4回「標準報酬月額の上限引き上げ」が関係します
保険料負担が増えますが、将来の年金額も増えます。
☑ 配偶者がいる(特に年齢差がある場合)
→ 第4回「加給年金への影響」が関係します
繰下げ受給を検討する際、加給年金(年額約40万円)を失うリスクがあります。
☑ 遺族年金を受給している、または受給予定がある
→ 第4回「遺族年金の見直し」が関係します
2028年から制度が変わり、選択肢が広がります。
☑ パートやアルバイトで週20時間以上働いている
→ 社会保険の適用拡大が関係します
将来的に厚生年金に加入する可能性があります。
改正を活かすために、今すぐできること

2026年4月まで、まだ時間があります。今のうちに準備しておくと、改正のメリットを最大限に活かせます。
① ねんきん定期便を確認する
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」には、あなたの年金加入記録や、65歳からもらえる年金の見込額が書かれています。
確認すべきポイント
- 老齢厚生年金の見込額(月額)
- 老齢基礎年金の見込額(月額)
- これまでの加入記録に漏れがないか
「ねんきん定期便が見つからない」「見方が分からない」という方は、年金事務所に問い合わせれば、丁寧に教えてもらえます。
② 65歳以降の働き方と収入を見積もる
改正の影響を受けるかどうかは、65歳以降の給与額によって変わります。
確認すべきこと
- 勤務先の再雇用制度(何歳まで働けるか、給与はいくらか)
- 自営業やフリーランスで働く予定があるか
- 不動産収入や株式配当など、他の収入源はあるか
③ 配偶者の年金状況も確認する
年金戦略は、夫婦で考えることが大切です。
確認すべきこと
- 配偶者の年金見込額
- 配偶者との年齢差(加給年金に影響)
- どちらか一方が亡くなった場合の遺族年金
④ この連載を最後まで読む
この連載では、第2回以降で具体的なシミュレーションや注意点を詳しく解説していきます。
第2回(次回)のテーマ
「働きながらもらう年金が大きく変わる」
在職老齢年金の計算方法、具体的にいくら増えるのか、働き方の戦略を解説します。
第3回のテーマ
「繰下げ受給で年金を最大化する方法」
損益分岐点の詳しい分析、在職老齢年金との組み合わせ効果を解説します。
第4回(最終回)のテーマ
「注意点とあなたに最適な年金戦略」
税金・社会保険料への影響、年齢・状況別のケーススタディを解説します。
まとめ:2026年改正の3つのポイント
最後に、今回お伝えした内容を3つにまとめます。
ポイント1:働くシニアには追い風の改正
在職老齢年金の基準額が50万円から62万円に引き上げられ、働きながらもらえる年金が増えます。
ポイント2:繰下げ受給の選択肢はすでに75歳まで
2026年改正で繰下げ受給の仕組み自体は変わりませんが、在職老齢年金との組み合わせで効果が高まります。
ポイント3:自分の状況に合わせた戦略が大切
年金改正の影響は、年齢、収入、家族構成によって異なります。まずは「ねんきん定期便」で現状を把握しましょう。
次回予告
次回(第2回)は、「在職老齢年金」を徹底解説します。
- 給与と年金の合計が月いくらなら、年金はいくら減るのか?
- 改正で具体的にいくら手取りが増えるのか?
- 働き方をどう変えるべきか?
具体的なシミュレーション例を交えて、分かりやすくお伝えします。
「働きながら年金をもらっている」「これから働く予定がある」という方は、次回必読です!
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【お知らせ】
- 第1回〜第3回は無料でお読みいただけます
- 各回にPDF特典とYouTube解説動画をご用意しています
- 第4回(最終回)は、より詳しいケーススタディと個別戦略をnoteにて有料公開(500円)予定です
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